【堀口珈琲】飲んで学べるスペシャルティコーヒー -基本の品種ティピカ・ブルボン編-

1: 今回のテーマは基本の品種
「ティピカ・ブルボン」

今回の「飲んで学べる」では、“スペシャルティコーヒー”の「品種」に注目します。

ワインを楽しむ人にピノノワールやシャルドネを知らない人がいないように、スペシャルティコーヒーを楽しむ人にはマストで知っておくべき品種があります。

“ティピカ品種”と“ブルボン品種”です。

堀口珈琲のオンラインストアではよく出てくる品種名なので「なんとなく知ってる」という人が多いかもしれません。中には「なんだティピカか、知ってるよ」「エチオピアからイエメンに渡って……の歴史でしょ、何回も本で読んだよ」という人もいるでしょう。

でも、
２つの品種がもたらす味わいの素晴らしさを深く楽しめている人はどれだけいるでしょうか？
そもそも、きちんと味わったことはあるでしょうか？
スペシャルティコーヒーにとって、ティピカとブルボンがいかに重要な品種であるか、きちんと理解できている人は？
ほとんどいないでしょう。

コーヒーの歴史においても、“産地の特性を楽しみわける”というスペシャルティコーヒーの成り立ちにおいても、「キー」となる品種である“ティピカ”と“ブルボン”、この機会に２つの品種にしっかりと向き合ってみましょう。

まずはじっくりと味わい、風味を楽しむことに集中します。
それから余力のある人と一緒に、スペシャルティコーヒーらしい楽しみにとって“この２つの品種がいかに重要であるか”を考察していきます。

2: ティピカとブルボンを
飲み比べてみよう

今回は、素晴らしい生産者が手がけた“ティピカ”と“ブルボン”をそれぞれ2種類ずつ、計4種類、厳選しました。
私たちの手元にあるティピカ・ブルボンをなんとなく４つ並べたのではなく、複数候補からスペシャルティコーヒーの基本の風味を楽しみやすい、比較テースティングしやすく素晴らしくおいしい４つを選抜しました。

販売価格：4,250円（税込4,590円）
　販売期間：8/14~8/27 AM8:00までの期間限定

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実はこれは結構すごいことなんです。
そもそも生産性や耐病性を理由に全体的な傾向としてティピカ・ブルボンを栽培する生産者は減少しています。激減と言っても良いでしょう。

品質で勝負しようとする生産者も、ゲイシャ品種やSL品種といったわかりやすい風味をもたらしてくれる品種を選びがちで、ティピカやブルボンを積極的に栽培する生産者は少数派です。

こういった状況下で高品質なティピカ・ブルボンを複数扱い、その中から選抜して比較テースティングを設計できるのは、堀口珈琲ならではでしょう。
全力で楽しんでいきましょう。

早く味わいたいなとワクワクしてきたところで、今回のテースティングのポイントを押さえておきます。
意識する大切なポイントは２つ。

1. クリーンなコーヒーであることを意識する
ティピカとブルボン、２つの品種で最も重要なのは“クリーンな風味に仕上がりやすいこと”です。
お酢のような質の酸味になりにくいこと、後味に心地良くない苦味やざらつき、穀物臭が出にくく、“きれいな酸味”や“繊細で華やかな香り”、“心地良い質感”“心地よい後味”が得られやすいということです。
ネガティブな風味が出にくいという地味な美点ですが、スペシャルティコーヒーにとって最も重要なポイントです。
きれいな風味を味わいましょう。

2. 品種の個性でなく産地の個性であることを意識＝どこで生産されたコーヒーか意識する
２つの品種に品種自体の強い個性はありません。
“個性が少ないことが特徴”です。
「つまらない品種なんだな」と思わないでください。スペシャルティコーヒーの楽しみの基本となるとても重要な“特徴”です。
クリーンという土台があって、個性が少ないという特徴を持つからこそ、生産される産地の個性が反映されやすいのです。

ニュートラルな風味で「産地の違いを鏡のように映す」品種、それがティピカとブルボンです。

こういった品種を楽しむときこそ、いつも以上にどこで生産されたコーヒーであるか意識しながら楽しみましょう。

【テースティング１】
本当にきれいな仕上がりのティピカとブルボンを飲み込む

【用意するコーヒー】
・コロンビア「ラ・クンブレ農園ティピカ」シティロースト
・グァテマラ「サンタカタリーナ農園グランレゼルバ」シティロースト

テースティング１では、ティピカ・ブルボンのクリーンさが際立つ、“お手本”コーヒーを体験します。
作りの良さから「飲んで学べる焙煎度編」の素材に採用したサンフランシスコ農園を手がけるディエゴ・ロペスさんが農地管理に携わるナリーニョ産ティピカ。そして、私たちが最も信頼を寄せる生産者の一人、ペドロさんが生産する間違いない品質のアンティグア産ブルボン。
二人の丁寧な作りが品種のクリーンさをきちんと取り出してくれていることを感じ取ります。

【味わい】
２つのコーヒーのクリーンさをじっくり感じていきます。
お酢のようなきつい酸味はありませんね。双方とも柑橘の心地よい酸味です。
飲みくだしても舌にまとわりつくように残る心地悪い苦味はありませんね。ほんのりと心地よい苦味が感じられます。
質感にざらつきはありませんね。なめらかです。きめ細やかさすら感じられるかもしれません。
余韻に穀物のような香りも残りませんね。甘い香りやほのかに華やかな香りが残ります。

双方とも“クリーン”が際立つ味わいであることが確認できました。

続いて、それぞれのコーヒーの個性を感じていきましょう。

・コロンビア「ラ・クンブレ農園ティピカ」シティロースト
口に含んで感じられるのは柑橘の酸。ジューシーで、明るく、とても爽やかです。その後には甘みの印象も立ち現れ、余韻まで長く続きます。ボディの強さもあります。しっかりとした柑橘の酸、力強いボディという“コロンビア・ナリーニョらしさ”がわかりやすく感じられます。舌の上に心地よくのっかり、スーッと伸びながらゆっくり消失していくシルクのような滑らかさが、酸や甘み、香りとあいまって、繊細で上品な印象も受けます。

・グァテマラ「サンタカタリーナ農園グランレゼルバ」シティロースト
口当たりが柔らかです。こちらも柑橘の酸が感じられますがきつすぎない印象で、甘みもともないます。コロンビア・ナリーニョ産のように爽やかでジューシーというよりは、熟した柑橘のニュアンスです。しっかりとしたコクもあります。飲み下すと、ほんのりとフローラルな香りが鼻を抜けていきます。“グァテマラ・アンティグアらしさ”全開のコーヒーです。

いずれのコーヒーも、見事なまでにクリーンで、それぞれの“産地らしさ”がしっかりと表れている、お手本のようなコーヒーでした。

【テースティング2】
異なる産地のティピカを飲み比べる

【用意するコーヒー】
・コロンビア「ラ・クンブレ農園ティピカ」シティロースト
・コスタリカ「【アルトス・デル・アベホナル】ディビーノ・ニーニョティピカ」シティロースト

今度はコロンビア・ナリーニョ産とコスタリカ・タラス産、２つの名産地のティピカを味わっていきます。
２つとも素晴らしい仕上がりですので、とりあえずおいしく飲んでしまうのもありですが、飲み比べる時はここでもまず双方の“クリーンさ”を意識し、感じとりましょう。
アタックからアフターまで、お酢のような酸はなく、嫌な苦味やざらつきもなく、きれいに始まり、きれいに終わりますね。

次に、ラ・クンブレの香りと酸味に集中します。
「柑橘、瑞々しい、明るい、ほのかに華やか」こんな感じでしょうか。
続けてアベホナルの香りと酸味を感じます。
「しっかり華やか、ティピカでもこんなにわかりやすく華やかなの？、フローラル、スパイシーもあるな、そして柑橘」ですね。
２つとも同じ方向を向いていますが、だいぶ違う味わいが感じられればバッチリです。

質感はどうでしょう。
双方ともきめ細かく滑らかです。「シルクのよう」と言って良いでしょうか。ナリーニョの方が少しだけキメ細かく、量感も多い気がします。

２つのコーヒーは、クリーンさや柑橘、華やか、シルキー、といった共通項がありながら、それらの質やバランスは随分と異なります。
品種の個性が控えめだからこそ、生産環境がしっかりと異なる個性をもたらしてくれている。
高品質なティピカならではの、とてもスペシャルティコーヒーらしい、比較テースティングでしたね。企画した私たちが一番テースティングを楽しんでしまったかもしれません。

【テースティング3】
異なる産地のブルボンを飲み比べる

【用意するコーヒー】
・グァテマラ「サンタカタリーナ農園グランレゼルバ」シティロースト
・ペルー「フェスパ農園ブルボン」シティロースト

最後は２つのブルボンを味わいます。
今回は産地の環境の違いが色濃く表れているので、比較テースティングでしっかり楽しんでいきましょう。

まずサンタカタリーナ農園の風味をもう一度楽しみます。
ベースのクリーンがあって、熟した柑橘の酸と甘み、しっかりとしたコク、ほのかなフローラル。このあたりを十分に味わいたいですね。

続いてフェスパ農園。
ベースのクリーンを確認したら味わいを深掘りしていきます。

サンタカタリーナの印象が残る中で飲み始めると、“柑橘”の印象を想像しながらの一口目になりますよね。
でも、「あれ？柑橘だけではないぞ」と思ったはずです。
赤系・黒系の果実が感じられます。
しっかりとしたコクやほのかなフローラルはサンタカタリーナ同様に感じられますが、果実の質が大きく異なっています。
おやおや、と思いながら果実感の違いを認識し全体像を眺めるようにテースティングすると、フェスパらしいおいしさが改めて感じられます。

同じブルボン品種で、生産者の技術力や品質管理能力も非常に高い２つのコーヒーが、これだけ異なる風味を呈する。
とても面白くておいしい違いを感じていただけましたでしょうか。
これこそスペシャルティコーヒーらしい、異なるおいしさ・異なる個性を楽しみわける、という飲み方です。

補足として解説しておくと、サンタカタリーナ農園のあるアンティグアは適度に乾燥している産地で、フェスパ農園のあるカハマルカは雨量が多く湿潤な産地、と環境に大きな違いがあります。フェスパでは収穫したチェリーの管理から精製（果肉除去～乾燥）の間、湿潤な環境にさらされるためこういった果実味がつきやすくなることが予想されます。もちろん土壌の違いや水質、生産者の管理手法の違いなども影響しているでしょう。

【抽出レシピ】
今回は全て「シティロースト」で焙煎度を揃えています。以下に記載のレシピを参考に、４つとも同じように抽出してテースティングしましょう。

【抽出のコツ】
注ぎ始めはじっくり焦らず、少量の湯を静かに注いで粉にお湯を浸透させます。30秒前後でサーバーに抽出液がポタポタ落ち始め、注ぐ量を少しずつ増やして60秒前後で抽出液のポタポタが線状になるように。その後は表に記載の抽出時間くらいで目標の抽出量に達するよう注ぐペースを早くしていきます。

ティピカとブルボンを２種類ずつ、計4か国のコーヒーを飲み比べてみました。
ここで一旦ポイントを整理しておきましょう。

POINT

✔　ティピカ・ブルボンの「ネガティブな風味が出にくい」という美点は、地味だけどスペシャルティコーヒーにとって最も重要
✔　ティピカ・ブルボンは品種自体に強い個性がなくニュートラルな風味で「個性が少ないことが特徴」の品種
✔　クリーンに仕上がりやすく、ニュートラルな風味であるがゆえに「産地の個性を鏡のように映す」品種

3: 品種の知識を学ぼう

ティピカとブルボンがなぜスペシャルティコーヒーにおいて基本であり重要な品種なのか、ここからは知識の面から迫っていきましょう。

ティピカとブルボンがなぜ「重要」なのか‐伝播の歴史から迫る‐

まずは、歴史です。
上の図はアラビカコーヒーの伝播ルートを示した世界地図です。
何やら年号も書かれているので既に一定数の方が身構えているかもしれませんが、地図を見ながら1699年に東インド会社が―、1713年にルイ14世が―、といった話は今回しませんのでご安心ください。
ここでは
「なぜティピカとブルボンが基本であり重要な品種なのか」
というテーマに沿って、なるべく脱線しないように歴史をみていきましょう。

まず、上の地図を俯瞰して眺めてみます。２つのルートで中米や南米大陸にコーヒーが広がっていったことがわかりますね。その世界各地に広がっていく矢印の元をたどっていくと、いずれもアフリカ大陸東側にある一つの国に辿り着きます。

ご存知、アラビカコーヒー発祥の地「エチオピア」です。

エチオピアは原産地であるがゆえに、たくさんのコーヒーの樹が自生しています。
「自分の農地にどの品種を植えよう」ではなく「自分の土地に自生しているコーヒーの樹から収穫する」から始まっている特殊な産地です。
エチオピアには長い歴史の中で突然変異や自然交配などが蓄積し遺伝的に多様なアラビカ種（≒品種）が存在しています。品種の境界が曖昧でその特定・管理も難しいため、エチオピアの品種は「在来品種」と表記されることが一般的です。

エチオピアの特殊な風味は、生育に適した環境と遺伝的に多様な「在来品種」群が関係していることは容易に想像がつきますね。巷を賑わすゲイシャ品種もエチオピアに自生していた在来品種の一つです、…とさっそく脱線しそうになりましたので、ここでは「アラビカコーヒー発祥の地エチオピアには多様な品種群が存在している」というポイントだけ抑えて次に進みます。

エチオピアから伸びる矢印は、海を隔てた向かいの国に伸びています。
イエメンです。

多様な品種群が存在するアラビカコーヒー発祥の地エチオピアから、一部の品種が紅海を隔てた向かいのイエメンに渡ったのは6世紀～9世紀ごろと言われています。その長い歴史にまず驚きますが、ここで注目したいのはその歴史の長さだけではなく「一部の品種が」という部分です。

多様な品種群が存在するエチオピアからイエメンに渡ったのは「一部の品種」で、品種の多様性がある程度失われた状態でイエメンの地に渡り、栽培され、コーヒー飲用文化が発展していきました。

その「一部の品種」の中にティピカとブルボンもいました。それ以外にも、近年の研究によってイエメニアという新たな品種が発見され話題になっていますね。堀口珈琲で現在販売中の「バニ・ナヒミ」もイエメニア品種です。その唯一無味の香味、未体験の方はぜひお試しください。と、また脱線してしまいましたので、ここでは「多様な品種群が存在するエチオピアからイエメンに渡ったのは一部の品種」というポイントを抑えて次に進みます。

17世紀になると大航海時代の影響もあり、イエメンから世界各地へとコーヒーが広がっていきます。当時はイエメンがコーヒー栽培を独占しようと種子や苗木の持ち出しを禁じていたとされていますが、その禁令をかいくぐり「一部の品種」の中からたった２つだけの品種が持ち出されました。

お察しの通り、それがティピカとブルボンです。

ティピカはインドネシア、ヨーロッパを経てジャマイカ、ベネズエラ、メキシコに移植され、中南米諸国に広がっていきます（上の地図の赤矢印）。
ブルボンはブルボン島（現在のレユニオン島）を経て、東アフリカや南米のブラジルへと広がっていきました（上の地図のオレンジ矢印）。

アラビカコーヒーはエチオピアに自生する多様な品種群の中から、ほんの一部の品種がイエメンに渡り、そこからさらにたった２つの品種ティピカとブルボンだけに限定されて世界各地に広がった（＝品種の多様性が失われた形で伝播した）のです。

さてここで質問です。
世界へと広がっていったティピカとブルボンはどのような特徴を持つ品種でしたでしょうか？

そう、「ニュートラルな風味で、産地の違いを鏡のように映す品種」です。
個性が少ないことが特徴、の品種です。

世界各地で栽培されようになったティピカとブルボンは、自ずと「生産地ごとの風土の違い」を「風味の中に可視化」してくれていたのです。

このことが「産地の個性を楽しむ」というスペシャルティコーヒーらしい楽しみ方に繋がっているのだと私たちは考えています。

この考察からティピカとブルボンをスペシャルティコーヒーらしさをもたらしてくれた品種、「基本の品種」であると私たちは位置付けています。コーヒー伝播の歴史が、ティピカとブルボンというニュートラルな品種への限定をもたらし、その後の「産地の個性を楽しむ」という嗜好飲料としての発展に偶然か必然か繋がっている。

この壮大なストーリーにみなさんもワクワクしながらスペシャルティコーヒーを楽しんでいただけるとうれしいです。

ティピカとブルボンがなぜ「重要」なのか‐品種の変遷から迫る‐

世界各地に広がったティピカとブルボンは、その後現在に至るまで突然変異や自然交配、人為的な選抜や交配によってさまざまな品種へと変遷していきます。
堀口珈琲が販売している商品の品種名を見渡すと、ティピカとブルボン以外にもカトゥーラ、カトゥアイ、ＳＬ28、パカマラ、パカス、ビジャサルチ、など様々な品種があります。
これらはいずれも、ティピカ、ブルボンをルーツに変遷していった品種たちです。

そして、もっとも歴史の古い品種ティピカとブルボンは―
残念ながら今では生産量が減少し、希少な品種、消えゆく品種になっています。

なぜでしょうか？
そこには主に2つの理由があります。

①生産性
１つ目は生産性です。
１本の木になる実の量（収量）は、品種によって異なります。取引価格が同じであれば、収量が多いほうが農家の収入は増えます。

また、樹高も品種によってさまざまです。樹高が高く、大きく成長するような品種だと、密植できず、収穫作業も困難です。木が大きく成長しない矮小な品種の方が密植でき、収穫作業の効率は高まります。

生産性という観点では収量が多く、矮小である方が優れている品種となります。

ティピカとブルボンはどうでしょう。
一般的には、生産性が低い品種といわれています。
枝のなかで実の付く部分の間隔が長く、実の付き自体も少ない傾向にあるためです。樹高が高く密植には不向き、収穫も行いづらいという難点もあります。

コーヒーの需要拡大とともに、生産性の高い品種への植え替えが進んでいきます。

②病気への耐性
2つ目は病気への耐性です。
病気への耐性も品種によって異なります。
コーヒーの樹がかかる病気はいくつかありますが、代表的なのは「さび病」です。
さび病は1861年にセイロン（現スリランカ）で初めて発見され、壊滅的な被害を及ぼします（これによりセイロンは紅茶の産地へと転換します）。1800年代末にはインドネシアで、1900年代に入るとアフリカ、中米でも深刻な被害をもたらします。こうした背景もあり、耐病性のある品種の探索や開発、耐病性のあるカネフォラ種の導入が拡大していきます。

ティピカとブルボンはどうでしょう。
残念ながら、さび病には弱い品種です。
特に標高が低い地域や湿潤な環境ではさび病が蔓延しやすいため、アラビカ種の産地においては耐病性のあるハイブリット品種（※）への植え替えが進められていきました。

※サビ病に強いカネフォラ種とアラビカ種の自然交配品種であるHdTやHdTとの交配により耐病性を獲得したアラビカ種の品種

生産性という観点から生産性の高い品種への植え替えが進み、耐病性という観点からハイブリッド品種への植え替えが進められた結果、ティピカ・ブルボンの生産量は減少し、今では希少な品種となりつつあるのです。

一方で、マンデリンをはじめ「産地ごとの違い」楽しむ嗜好品として愛されてきたコーヒーたちは、伝統品種の消失とともに、かつての風味を失いつつあります。その要因の１つに品種があることは間違いないでしょう。生産性や耐病性を獲得した品種たちは、必ずしもティピカやブルボンのようにクリーンで「産地の違いを鏡のように映す」品種ではないからです。ティピカやブルボンでなければおいしいコーヒーができないわけではありません。しかし、産地の個性をもたらすという基本の風味はかけがえのないものでしょう。

目次

今回のテーマは基本の品種「ティピカ・ブルボン」

2つの品種を飲み比べてみよう

スペシャルティコーヒーの「品種の知識」を学ぼう

おわりに

今回のテーマは基本の品種
「ティピカ・ブルボン」