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スペシャルティコーヒーの“基本”が詰まった
アンティグア
初めて訪れるスペシャルティコーヒー専門店。店頭に並ぶ沢山のコーヒー豆を前に
「どれを飲めばいいんだろう……」
スペシャルティコーヒーに関心を抱き始めたら、多くの方が経験する“あるある”ですよね。
試しに私たちのサイトの「シングルオリジン一覧」を眺めると、さまざまな産地や品種のコーヒーがずらりと並んでいます。何を基準に選んでいいのかわからないというのはごもっともです。
ですが、安心してください。私たちには「まずはこのコーヒーから飲んでください」と自信を持っておすすめできるコーヒーがあります。
グァテマラ・アンティグア産のコーヒーです。
なぜなら、
優れたグァテマラ・アンティグア産にはスペシャルティコーヒーの基本のおいしさが詰まっているからです。
きれいな柑橘の酸、ほどよいコクと甘み、ほのかに香るフローラル。
バランスに優れたマイルドな味わいは、いつ飲んでも、誰が飲んでも、どういれても「おいしいコーヒーだな」と感じていただけます。まさにスペシャルティコーヒーのお手本のようなコーヒーです。
さらにはグァテマラ・アンティグア産の風味を知り、その風味を基準として他のコーヒーを味わっていくことで、それぞれのコーヒーの個性をわかりやすく捉えることができ、スペシャルティコーヒーの“多様性”を楽しみながら理解を深めていくことができるようになります。
おいしく飲みながらスペシャルティコーヒーを楽しむための味覚訓練もできちゃう、一石二鳥なコーヒーがグァテマラ・アンティグア産のコーヒーなんです。
堀口珈琲のグァテマラ・アンティグアといえば「サンタカタリーナ農園」。
農園主のペドロさんは、かれこれ20年の付き合いになる私たちの大切なパートナー生産者です。
今回はペドロさんが手掛ける「サンタカタリーナ農園」「ラ・トラベシア農園」「ラ・ホヤ農園」の3つのコーヒーを順番にリリースしていきます。これらを通して、アンティグアの素晴らしさと、スペシャルティコーヒーの基本の風味を楽しんでください。
アンティグア未体験の方は、まずはどれか1つでOKですので、この機会に必ず体験してください。
3つともコンプリートしたら、もうこれでスペシャルティコーヒーの基礎は完璧です。
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【6/12更新!】いま飲めるアンティグア
「ラ・ホヤ農園」
シティロースト
シティローストでは、アンティグアらしい柑橘の酸、滑らかな質感、
ほのかに香るフローラルを分かりやすく体感することができます。
口当たりは柔らかく、酸・コク・甘みに優れたアンティグアらしい風味を体験できます。
「ラ・ホヤ農園」
フルシティロースト
フルシティローストでは、質感の滑らかさがより豊かに表れます。
チョコレートを思わせる上品なコクに加え
ほのかに柑橘果実や赤色果実のニュアンスも感じられ華やかさも体験できます。
抽出レシピとコツ
【推奨レシピ】
【抽出時のポイント】
シティローストは「濃すぎず、軽すぎず」バランスの良さを意識します。抽出開始から30秒前後でサーバーに抽出液がポタポタ落ち始め、注ぐ量を少しずつ増やして60秒前後で抽出液のポタポタが線状になるように。その後は表に記載の抽出時間くらいで目標の抽出量に達するよう注ぐペースを徐々に早くしていきます。
フルシティローストはシティローストよりも濃度感を出し、口当たりの良さを引き出すように意識します。抽出開始から35~40秒前後でサーバーに抽出液がポタポタ落ち始め、1分15秒程度を目安に抽出液のポタポタが線状になるように。その後は表に記載の抽出時間くらいで目標の抽出量に達するよう注ぐペースで。
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アンティグアの特徴を理解しよう
コーヒーの話に入る前に、
アンティグアはスペイン植民地時代に首都として栄えた古都で、コロニアル調の街並は世界文化遺産として登録されています。写真はアンティグアの街の象徴でもある時計台。なんだか見覚えがありませんか? そう、堀口珈琲のグァテマララベルにも描かれている時計台です。
アンティグアはこんな街並みの周りにコーヒー農地が広がっている産地です。次の海外旅行の行き先はグァテマラでどうですか。
さて、コーヒーの話をしましょう。
アンティグアは古くからコーヒーの「名産地」として名を馳せてきました。試しに米国の某大手コーヒーチェーン店のオンラインストアを覗いてみると、「ケニア」「コロンビア」といった国名の商品が並ぶ中で、グァテマラは「グァテマラ アンティグア」という商品名で販売されています。アンティグアはそれだけ特別なコーヒー産地であり、私たちもまたアンティグアに対しては深い思い入れがあります。
冒頭でお話した通り、私たちはアンティグアをスペシャルティコーヒーの「基本の風味」を体現する産地として位置付けています。そして、初めての方には「まずはこのコーヒーを飲んでみてください」と積極的におすすめしてきました。その背景を少しだけ掘り下げてみます。
生産環境、品種、作りのよさの三拍子が揃う名産地
スペシャルティコーヒーは、生豆の生産環境の微細な違いが反映された風味=“個性”を楽しむコーヒーとして発展してきました。
そのため生豆の生産段階では、恵まれた「生産環境」と、その生産環境を鏡のように映す「品種」、そしてその個性を邪魔してしまう雑味をもたらさない「作りのよさ」の3つが基本となります。
この3つの観点からアンティグアを見ていきましょう。
【1.恵まれた生産環境】
アンティグアの環境でまず注目するのは標高です。
3つの火山を中心とする山に囲まれた盆地地形ですが、平地部分でも1,500mを超え、山のスロープでは2000mを超える場所まで農地が広がる高標高産地です。
標高が全てではありませんが、高品質コーヒーの生産にとって高標高は大きなアドバンテージです。
次に注目するのは雨量です。
アンティグアには太平洋側から雨雲がやってきますが、アグア火山とフエゴ火山、アカテナンゴ火山によって閉じられているため、大気はある程度雨を落としてから流入します。
降雨はあるけれど多すぎない、乾燥しつつもコーヒー栽培に必要な雨は降ってくれる、という絶妙なバランスの気候です。
そして土壌です。
過去の噴火による堆積物が風化した火山性土壌で、コーヒーの生育に必要な成分が豊富に含まれるとともに、透水性と保水性の双方をあわせ持つ構造も持ち合わせています。標高・気候・土壌、コーヒー栽培に適した環境がそろっている代表的産地の1つがアンティグアです。
【2.伝統品種の栽培】
中米はティピカやブルボンといった伝統品種が栽培されてきた産地ですが、生産性の高さからカトゥーラ品種などへの植え替えが進み、サビ病の流行により耐病性品種への置き換わりが顕著になってきました。
グァテマラは全体的に標高の高い(=サビ病が蔓延しづらい)生産国であったため、他の中米諸国とは異なりティピカやブルボンの栽培が維持されてきました。そのことがグァテマラという生産国の品質の高さを支える要因になったことは間違いないでしょう。
しかし2010年代にグァテマラでもサビ病が大流行し、これを経て耐病性品種への植え替えが急速に進んでいます。
その一方で、伝統品種を大切にしブルボン品種を作り続ける品質重視の生産者もいます。特にアンティグアなどの標高が高いエリアはしっかりとした対策をとればサビ病を予防できることもあり、ある程度ブルボン品種の栽培が継続されています。
【3.精度の高いウォッシュト精製】
コーヒー生産の歴史が古いアンティグアには複数の名門農園が存在します。彼らは自身のウェットミル(精製施設)を所有しており、しっかりした設備と経験に裏打ちされた精度の高いウォッシュト精製を施し続けてきました。時代の急速な変遷とともにその伝統は一部では廃れてしまったものの、今でも設備の更新と技術の継承・更新を繰り返しながら“質の高いウォッシュト精製”を維持している農園は残っています。
生産環境、品種、作りのよさ。この三拍子がそろっている産地は貴重で、アンティグアが古くから「名産地」として名を馳せてきたことがうなずけます。
近年アンティグアでも気候変動や品種の変遷、精製の変遷は起こっていますが、それでもまだ、一部の名門農園では“お手本”と言うべき素晴らしいコーヒーが作り続けられています。
アンティグアの風味
スペシャルティコーヒー生産の基本を押さえたアンティグアからもたらされる風味は「マイルド」と形容されます。
その風味を構成する要素を具体的に見ていくと、
・きれいで豊かながらシャープすぎない酸味と香りがもたらす柑橘のニュアンス
・焙煎の進行とともに表れるしっかりとした質感
・余韻まで続く十分な甘み
・ほのかなフローラルさ
・焙煎度を問わず、風味の各要素が高次元で安定するバランスの良さ
といった特徴が挙げられます。
一口に「マイルド」と言っても、それは突出した個性のない・平均的な、という意味ではありません。全ての要素において高次元に均整が保たれた非常にレベルの高いコーヒーであり、世界中を見渡してもこうしたコーヒーにはなかなか巡り会えません。
そして、このアンティグアの風味を中心に置いて他のコーヒーを味わっていくと、それぞれのコーヒーの個性をわかりやすく理解でき、スペシャルティコーヒーのおいしさ・楽しさが広がっていきます。
例えば、他の中南米産の比較的マイルドなコーヒーをアンティグアと比較することで「ホンジュラス・セルグァパはより爽やかな印象だな」、「コロンビア・ナリーニョはよりボディがどっしりしている」といった感じで一括りに「マイルドな中南米」ではなく、それぞれのコーヒーの個性を細分化して理解することができます。
東アフリカのアロマティックなコーヒーを味わうと「ケニア・キリニャガは柑橘以外にも様々な果実味を感じる」「エチオピア・イルガチェフェはフローラルさが際立つ」といった感じでその強い個性をより高い解像度で認識できます。
スペシャルティコーヒーを味わっていく上で座標軸の中心に置くことができるお手本のような風味であるからこそ、私たちはアンティグアをスペシャルティコーヒーの「基本の風味」を体現する産地と位置づけ、「まずはこのコーヒーを飲んでみてください」とおすすめしてきたのです。
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堀口珈琲のアンティグアといえば
「サンタカタリーナ農園」
コーヒーの名産地としてのアンティグアを理解していただいたところで、ここからは“堀口珈琲の”アンティグアについてです。
私たちはアンティグアに絶対的な自信があります。それを裏付けるのは、アンティグアにおいて20年間に渡って共に品質の維持向上に努めてきたパートナー生産者の存在です。
「サンタカタリーナ農園」
ファンの皆様にはお馴染みですね。堀口珈琲のシングルオリジンにおいて圧倒的な人気を誇る定番商品です。農園主のペドロさんが長年に渡って高い品質のコーヒーを生み出し続けるのには訳があります。
コーヒー栽培に恵まれた環境
まずは「生産環境」です。
農園はアカテナンゴ火山の東斜面に位置し、標高1,600mから2,000m超まで広がっています。朝方にはしっかりと日が当たり、夜間は冷え込むため、高品質なコーヒー栽培に必要な寒暖差が生まれる立地です。
80haの広大な農地は40区画に分けられ、細かく管理されています。
農地にはしっかりとシェードツリーが配置され、適宜剪定をすることで日照量をコントロールしています。近年の気候変動に対応すべく深さ360mにおよぶ井戸を掘って取水し、降雨量が不足したら水を撒くといった対応もしています。このようにペドロさんは農地毎の特性や環境の変化にアジャストして品質を高めています。
伝統品種ブルボンを大切にする考え
続いて「品種」です。
伝統品種であるティピカやブルボンの栽培が継続されてきたアンティグアでも、近年では変化が見られます。きかっけは2012年〜2013年にかけて中米で流行した新型のサビ病です。グァテマラも大きな被害を受けたことにより、伝統品種から耐病性品種への植え替えが急速に進んでいます。
ペドロさんもリスクヘッジのために一部農地で耐病性品種の栽培を開始していますが、彼は伝統品種であるブルボンを大切に考えていて、今もブルボンの栽培を継続しています(農地を視察すると、ペドロさんはあっちこっち指差しながら「あれはブルボンだ!こっちもブルボンだ!」と誇らしげに言います)。
その分、サビ病対策は入念です。
まず、サビ病はカビの病気で高温多湿で蔓延しやすいため、気温の低い高標高エリアでは蔓延しにくい傾向にあります。その特性を踏まえて、標高の低いエリアでは耐病性品種も植えつつ、標高の高いエリアではブルボン中心の栽培を継続しています。
サビ病予防のためには木々の健康管理も重要です。コーヒーの木にしっかりと栄養がいくようにこまめに除草し、適切な施肥によって木々の健康を良好に保ちます。また、3年に1回は不要な枝をカットします。これにより栄養が木全体に行き渡るようになり、木が持つ免疫力が高まり、病害虫に負けにくい健康な状態になります。
精度の高いウォッシュトを施すための設備
3つめは「設備と技術」です。
ペドロさんは自前のウェットミル(精製施設)を所有しており、収穫したコーヒーチェリーに自らの手でウォッシュト精製を施しています。イメージしやすいように、写真も交えながら簡単にご紹介していきましょう。
こちらの大きな機械は果肉を除去するパルパー(果肉除去機)と不要なものを取り除くクリバ(円筒の形をしたもの)という機械です。収穫したコーヒーチェリーは浮力選別で過完熟豆を取り除いた後、クリバで枝葉などの大きな夾雑物を取り除き、パルパーで果皮と果肉を除去。パルパーで剥けなかった未熟豆は第二クリバで取り除きます。
その後、発酵槽で約12時間かけて発酵させます(ドライファーメンテーション)。これにより種子を覆う殻にしっかりと固着している粘質物のミューシレージを取り除きやすくします。その後、ミューシレージを取り除く工程へ向かいます。
発酵を施した後、通常は発酵槽に水を注入したり、水路を使ってミューシレージを洗い流しますが、ペドロさんは機械を使ってミューシレージを取り除きます。
右の青い機械がミューシレージリムーバー、左の緑の機械がセントロフレックスです。発酵を施した後は右のミューシレージリムーバーでぬるぬるしたミューシレージを一瞬で取り除きます。
左のセントロフレックスは遠心分離脱水機です。乾燥工程にむけて、ここである程度水分を飛ばします。そうすることで水分値のバラツキと乾燥工程での乾燥ムラを軽減させることができます。
このように、ペドロさんは伝統的な発酵工程を残しながら、水洗工程では先進的な機械を使ってウォッシュト精製を施しています。
乾燥場(パティオ)です。広大なスペースにコーヒーが敷かれる景色は壮観。天候にもよりますが、ここで8-12日間乾燥します。定期的に撹拌され、乾燥ムラや過度な日焼けが起きないようにしています。悪天候が続く場合は機械式の乾燥を施すこともあります。
専門的な単語も出てきて「何のこっちゃわからない」かもしれませんが、お伝えしたいのは、ペドロさんが基本に忠実なウォッシュト精製を施し続けるために、常に設備投資や手法の改善に取り組んでいるということです。
人件費の高騰や労働者不足が深刻な中で、効率化を図らなければ高い品質のウォッシュト精製を作り続けることは難しくなっていきます。伝統のウォッシュト精製の本質を維持しながら、どう品質と生産量を維持確保していくか、ペドロさんはその努力を怠らない生産者です。
現地を訪れてウェットミルを視察すると、とにかく清潔です。ゴミひとつ落ちておらず、処理の中で発生するであろう果肉や果皮のかす等も見当たりません。ひとつひとつの処理ごとにかなり丁寧に清掃していました。こうした細かく丁寧な仕事にも、品質管理意識の高さを感じます。
そしてこれらの丁寧な仕事の積み重ねが、雑味のないクリーンカップに繋がっていくのです。
まとめ
アンティグアの恵まれた生産環境において、伝統品種ブルボンを大切にし、優れた設備と技術、そして品質管理意識の高さによって基本のウォッシュトを作り続ける。そんなペドロさんと堀口珈琲はパートナーシップを結び、20年に渡って品質向上に努めてきました。
気候変動、サビ病の被害と品種の植え替え、肥料価格の高騰、労働者不足…、といったコーヒー生産を取り巻く様々な変化の中にあるアンティグアにおいて、毎年のようにペドロさんから安定した質と量のコーヒーが届き、ほぼ年間を通じて高品質なアンティグアを楽しめるのは、実はとても貴重なんです。
今回の特集ではペドロさんが手掛ける「サンタカタリーナ農園」をはじめ、「ラ・トラベシア農園」「ラ・ホヤ農園」の3つのコーヒーを順番にリリースしてきました。
これらのコーヒーを通して、アンティグアの素晴らしさと、スペシャルティコーヒーの基本の風味を楽しんでいただけたのならば非常にうれしく思います。
そしてこのアンティグアのコーヒーを基に、他のコーヒーへの関心が少しでも高まりスペシャルティコーヒーをより楽しんでもらえるようなきっかけになる事を願っています。