TOP > 飲んで学べる スペシャルティコーヒー -東アフリカ編-
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「個性」の違いをわかりやすく!楽しく!
新企画を始めます!
街に出ればカフェがあり、コンビニでも淹れたてのコーヒーが買える時代。
あらためて見渡すと、コーヒーがいかに私達にとって身近な存在であるかを実感します。
朝の出勤前に、午後の眠気覚ましに、友人との団欒や商談の際に、なんとなくかっこいいから。
日常生活の様々なシーン・目的にコーヒーはあります。
しかし、日常的にコーヒーを飲む方が多い一方で、「嗜好品」としてコーヒーを捉える方はまだまだ少ないかもしれません。
丁寧に栽培され、しっかりと品質管理されたコーヒーには「個性」が現れます。
その風味の個性(違い)を楽しむことが、スペシャルティコーヒーならではの醍醐味と言っても過言ではありません。
そんな「嗜好品」としてのコーヒーを多くの方に体験していただきたく、今回のシリーズ企画は立ち上がりました。
名付けて「飲んで学べるスペシャルティコーヒー」。
「おいしい」にほんの少しの「知識」が加わると「おもしろい」や「楽しい」に繋がります。
一杯のカップに秘められた背景を知れば知るほど、楽しさもぐっと深まります。次のコーヒー選びが待ち遠しくなるかもしれません。
生産エリア、精製方法、品種…などコーヒーの「個性」が生まれる背景には数多くの要素があります。
しかし、身構える必要は全くありません。順番に少しずつ紐解いていきましょう。そのためのシリーズ企画です。
テーマに合わせたセット商品や特集記事を通じて、みなさまをご案内します。ぜひ最後までお付き合いください!
1−1 今回のテーマとなる産地は・・・?
さて、記念すべきシリーズ第一回目のテーマは「エリア(産地)」の違い。
題材となるエリアは「東アフリカ」です。
昨年の2月に販売した同エリアに属する国、「ケニア」から届いたコーヒーの品質は大変素晴らしく「10年に一度の出来かも!?」と、長年働くスタッフすらも大興奮。その分かりやすく個性的な味わいから、虜になったお客様も多かったのではないでしょうか?
実はケニア以外にも、個性的なコーヒーが数多く揃うのは東アフリカならではの特徴。「味わいの違い」が比較的分かりやすく、このエリアの体験を深めれば、他のエリアの飲み比べももっと楽しいものになってきます。
というわけで、今回は東アフリカを代表する4か国のコーヒーの飲み比べを通じて理解を深めていきましょう!
1−2 特別な飲み比べセットのご紹介
今回の企画に合わせ、東アフリカの4か国(エチオピア・ルワンダ・ケニア・タンザニア)の飲み比べが楽しめる「東アフリカ4か国飲み比べセット」を期間限定で発売します。
普段は200gでしか販売していないコーヒー豆を4か国それぞれ100gごとにご用意した、手に取りやすいセット商品です。4か国それぞれが焙煎度もすべて異なるセットになっていますので、国ごとの飲み比べは勿論、焙煎度違いの飲み比べも面白いですよ。
まずは本セット商品をお手元に用意していただき、後に続く記事を読みながらそれぞれの「個性」に迫っていきましょう!
実は、こんなにも素晴らしい品質の4ヵ国を同時に扱えること自体がとても貴重なタイミングです。(飲み比べの目的がなくとも、ぜひお試しいただきたいセットでもあります。)
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【飲み比べてみよう】東アフリカの4か国の個性
"丁寧に栽培され、しっかりと品質管理されたコーヒーには「個性」が現れます。"
と冒頭でお伝えしました。
それでは、その「個性」を捉えていくためには、どのようにアプローチしていけばいいのでしょうか。
この世に同じ人間がいないように、厳密にはまったく同じ風味の一杯は存在しません。コーヒーの風味を決定づける要素はたくさんあり、その結果は無限です。
ただし、産地という枠組みに絞ってみると、コーヒーにも「国民性」のようなものがあります。
それは国ごと、エリアごとの風味傾向です。
つまり「個性」の解像度をどこまで細かく捉えるか、という話です。(品質の高いコーヒーほどその解像度を細かく表現できるのですが、その背景はまた別の場で...!)
まずは大きく見ていきます。
今回ご紹介する4か国のコーヒーの風味傾向をざっくり表現すると以下のようになります。
エチオピア・・・圧倒的な華やかさ。フローラルな香りやフルーティな風味。
ケニア・・・ジューシーな果実の酸と甘み。力強いボディもあり濃厚。
タンザニア・・・豊かなコク。柑橘を思わせるすっきりとした酸味。
ルワンダ・・・柑橘果実が主体のマイルドな味わい。
今回はこの4か国のコーヒーの風味傾向が非常にわかりやすく体験できるラインナップを揃えました。さらに、各キャラクターを存分に味わっていただける焙煎度で煎り分けてご用意しています。
ぜひ飲み比べていただき、まずは大きな特徴を捉えるところからスタートしていきましょう。飲み比べの際に1つだけ”理想”をお伝えさせていただくと、推奨レシピ(ペーパードリップ)に合わせて抽出をしていただきたい、という点です。
それぞれのコーヒーに合った抽出レシピをご用意しましたので、こちらを参考にコーヒーを淹れていただくと、以下に解説する風味の個性もわかりやすく体験していただけるはずです。
「こんな部分」に注目して飲んでみてほしい、というポイントも記載しましたので、飲む際の参考にしていただけますと幸いです。
エチオピア「ウォテ」シティロースト
エチオピアの名産地”イルガチェフェ”のコーヒーです。同エリアのコーヒーは柑橘系の果実をベースに、白桃などのふくよかな果実味が感じられる傾向にあります。 香りも華やかで、フローラルに加え、スパイシーな要素も感じられることが多くあります。今回ご用意した「ウォテ」はスパイスの要素は控えめで、スミレのようなフローラルさが表れやすくエレガントな印象がしっかりと表れています。その華やかな香り、瑞々しい果実感を感じていただくべくシティロースト(中深煎り)に仕上げました。
【ここに注目して飲んでみて】
・飲む前から立ち昇るフローラルな香り
粉に挽き、抽出する段階から白や黄色いお花を思わせる香りが漂ってきます。飲み下したあとも、フローラルな香りが鼻に抜けていきます。
・口に含んだ際の、瑞々しい果実感
口に含むとレモンのような明るい柑橘の酸や、プラムを想起させる華やかなフレーバーが感じられます。その瑞々しい果実感はエチオピアならではです。
【推奨のレシピ】
【抽出時のポイント】
時間はかけ過ぎず、抽出の後半は湯量を増やしてさっと抽出をするイメージで。後味に渋さが出てしまうようであれば抽出の時間を10秒ほど短くしてみましょう。
ルワンダ「【マチアゾ】ガコ」フルシティロースト
東アフリカの中ではバランス良くマイルドで、柑橘系の果実味を主体にした優しい味わいのコーヒーが多いルワンダ。 今回ご紹介する「【マチアゾ】ガコ」は柑橘果実に加えて、赤系や紫系の果実味も加わり、複雑な果実味が織りなす“華やかさ”が感じられます。しっかりとしたコクも備えており、その個性を堪能していただけるフルシティロースト(中深煎り)でお楽しみいただきます。
【ここに注目して飲んでみて】
・滑らかな質感(特に口に含んだ際)
抽出した液体を口に含むと、まずはほどよく粘性のあるなめらかな舌触りが楽しめます。
・鼻に抜けていく華やかな香り
体を飲み下した後には、熟した果実の甘い香りが鼻に抜けていきます。華やかな余韻をお楽しみください。
【推奨のレシピ】
【抽出時のポイント】
前半は丁寧にじっくりと、後半にかけて少しずつ湯量を増やしていくようなイメージで。エチオピアよりも、気持ちゆっくり目に抽出してあげると良いです。
ケニア「カイナムイファクトリー」フレンチロースト
その明確な酸と濃厚な甘みから、様々な果実を連想させてくれるケニア産のコーヒー。浅めの焙煎度では柑橘や赤い果実のジューシーな酸味を特徴的に感じることができ、焙煎が深くなるにつれ黒い果実や熟した果実を連想させる華やかで甘い果実味が感じられ、ボディの強さも際立っていきます。 今回はフレンチロースト(深煎り)でケニアの力強いボディと濃縮感のある果実味を体感していただきます。
【ここに注目して飲んでみて】
・ボディの厚み
感じ取れる味わいの要素も多く、液体を口に含んだ時のボリューム感があります。
・濃縮された果実感
熟したプルーンやベリーを思わせる甘みを伴った果実味が感じられます。滑らかな質感と相まって、口に含んでから飲み下した後も長い余韻が続きます。
【推奨のレシピ】
【抽出時のポイント】
焦らずじっくりと、濃い液体を抽出するように。同じところにお湯を注ぎすぎると、すぐにお湯が抜けてしまうので粉全体を使うイメージで。
タンザニア「ブラックバーン農園」イタリアンロースト
タンザニアといえばすっきりとした「酸味」に目が行きがちですが、堀口珈琲のタンザニアは一味違います。今回ご紹介する「ブラックバーン農園」のコーヒーは圧倒的なボディと、濃縮感のある果実味が特徴的。イタリアンロースト(極深煎り)にすることで粘性を帯びた重量感が感じられ、しっかりとした苦みの中にも華やかさが感じられるのはこのコーヒーならではです。
【ここに注目して飲んでみて】
・重厚感
クリームやバターのような粘性のある質感が感じられます。舌にのせた際の重厚感にぜひ注目してみてください
・充実した苦みの奥にある華やかさ
イタリアンロースト(極深煎り)ならではのしっかりとした苦みが感じられますが、余韻の華やかな印象や、柑橘果実の印象にも注目です。極めて深い焙煎にも耐えられ、かつその個性を発揮できる「ブラックバーン農園」の神髄です。
【推奨のレシピ】
【抽出時のポイント】
お湯を注ぎすぎないように、我慢しながら小刻みに抽出するイメージで。15gでの抽出が難しければ、25gのレシピでいれてみると少しだけやりやすいかもしれません。
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地理から学ぶ、東アフリカの特徴
ここまでは風味の面で東アフリカ4ヵ国のコーヒーにどのような個性の違いがあるかを実感していただきました。 ここからは、この個性を生み出す要素のひとつである「地理的な環境」についてご紹介します。
良いコーヒーが生まれるためには
そもそもコーヒーはどこで栽培されているのか。
「コーヒーベルト」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、その栽培可能エリアはおそらく皆様が想像するよりもはるかに狭い範囲に限定されています。
高品質なコーヒーとなると、なおさらその条件(平均気温や昼夜の寒暖差、日照量、雨量、降雨パターンなど)はシビアになります。
(この話の深堀りは、ぜひ過去に特集した「赤道直下3カ国 ケニア・コロンビア・インドネシア ‐良いコーヒーが育つ場所‐」のページをご覧ください...!)
アフリカ全土の地図を見てみると、今回ご紹介した「エチオピア」「ケニア」「タンザニア」「ルワンダ」は大陸の東側に集まっていることがわかります。
アフリカのなかでも名産地と呼ばれるエリアを有するこの4ヵ国は、なぜ地理的にこんなにも近くに固まっているのでしょうか。「北側や西側ではコーヒーを栽培する場所はないのか?」と疑問に思う方もいらっしゃると思います。
なにか理由がありそうです。
アフリカ全土の標高地形図に目を向けてみると、北西側には世界最大級の砂漠地帯「サハラ砂漠」が全土の3分の1を占めており、乾燥地帯となっています。 また、西側のエリアは平原地帯となっている地域が多く、低標高で高温多湿なエリアが多いのが特徴です。コーヒーが栽培されているエリアもありますが、高品質なコーヒーを作るという側面においては、充分な寒暖差や雨量などが得られにくい環境になっているのです。
一方で地図上の東側・南側に目を向けてみると、標高の高いエリアがあるのがわかります。これは「グレートリフトバレー(大地溝帯)」と呼ばれる巨大な谷(南北を約7000キロに渡って縦断)が通るエリアで、その谷の周辺には高い山や台地、火山を見ることができます。(※前述の地図上赤枠付近)
地球内部のマントルの対流によって2000万年以上も前から形成の始まった世界最大級の巨大な地溝であり、周囲は独特な気候と自然環境に恵まれています。
このグレートリフトバレー付近はアフリカ大陸内では比較的標高の高いエリアとなり、結果としてコーヒー栽培に適した気候や昼夜での十分な寒暖差が得られやすい傾向にあります。 こうして地図を見てみると、今回ご紹介した「エチオピア」「ケニア」「タンザニア」「ルワンダ」はいずれもこのグレートリフトバレー付近に位置していることがわかりますね。
4ヵ国の地理的特徴
続いて各国において高品質なコーヒーを生み出す産地の地理的特徴を簡単にご紹介していきます。
【エチオピア】 南西部の高標高な台地と北東部の山岳地帯
高品質なコーヒーが獲れるエリアは、主にグレートリフトバレーの両サイド。起伏が激しいというよりは高標高の台地が広がっているエリアに産地が点在しています。今回ご紹介した「ウォテ」の産地であるイルガチェフェをはじめ、グジ、シダマ、ジンマなどの生産エリアがあります。一方、北東部のハラー地区は比較的乾燥している山岳地帯で風味も他のエチオピアと大きく異なり独特です。
【ケニア】 ケニア山麓の高標高エリアに集中
火山性の肥沃な土壌を有しているケニア山南麓の「ニエリ」「キリニャガ」「エンブ」3県を中心とする一帯に高品質なコーヒーを生産する農家とファクトリー(精製施設)がいくつも存在しています。
【ルワンダ】 南西部や北部の丘陵地帯
中米のような急峻な山が並ぶというよりは、標高の高いところで丘があちこちに盛り上がるような地形で「千の丘を持つ国」と呼ばれています。斜面の角度や方角によっても日照量や雨量が異なり、それが結果的に丘単位での風味の違いに影響していると感じます。国の東部は全体的に標高が低いため、高品質なコーヒー産地は南西部や北部に集中しています。
【タンザニア】 キリマンジャロ山周辺の高標高エリア
ケニアとの国境付近にあるキリマンジャロ周辺の高標高エリアが主な高品質コーヒー産地になっています。実はグレートリフトバレーが生まれるきっかけとなった地殻変動の際に、このキリマンジャロが生まれたとされています。
このように、同じ東アフリカのコーヒー産地といっても地理的特徴は多様です。さらには同じ国内(エリア)の中でも、その地域ならではの地形、気候や雨量の差なども影響してきます。
例えばエチオピアの中でもイルガチェフェとジンマでは異なる個性を感じられますし、同じイルガチェフェの中のウォルカ地区のコーヒーでも、収穫される集落によって異なる個性が感じられるのはそのためです。前章で解説した各国のコーヒーの「個性」を決定づける要因はたくさんありますが、こうした「地理的な条件」も複雑に影響しているという訳です。
繰り返しになりますが、ここでの話のメインとなった「地理的な条件」は、コーヒーの味わいの違い、すなわち「個性」を生み出す重要な要素の一つにすぎず、「個性」を生み出す要素や背景は他にも数多くあります。国別の産地深掘りはまた別の機会にじっくりご紹介する予定ですので、まずは、実際に各国のコーヒーを体験していただき、それぞれの風味個性の違いを実感していただくことが何より大切です。そのなかで、最後にご紹介した東アフリカという土地の地理的な特徴を少し、思い浮かべていただけたら幸いです。
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おわりに
今回は「東アフリカ」を題材に、「産地」の違いによるコーヒーの個性についてお楽しみいただきました。このエリアの飲み比べをきっかけに、他のエリアはどんな違いがあるのだろう?と少しでも興味を持っていただければ幸いです。
もし先に記事を読んでいただき、実際に飲み比べをしてみたいと思った方に向けて、ページの下部に飲み比べセットのご紹介と特集内で扱った各アイテムも改めて載せておきますのでぜひお試しいただければと思います。
【オンライン限定】東アフリカ4か国飲み比べセット
【オンライン限定】東アフリカ4か国飲み比べセット
販売期間:2/14~2/23 AM8:00までの期間限定
※ご好評につき完売しました。各商品、単品での販売は継続して行いますのでぜひお買い求めください。
ルワンダ 「【マチアゾ】ガコ」 フルシティロースト
ルワンダ 「【マチアゾ】ガコ」 フルシティロースト
販売価格(200g):税込1,674円
※2/26ごろまでの販売。2/28より焙煎度がフレンチローストへ切り替わる予定です。
本特集における参考文献/出典元
・国土地理院 「地理院地図」(https://maps.gsi.go.jp/)
・Updated world map of the Köppen-Geiger climate classification(https://hess.copernicus.org/articles/11/1633/2007/hess-11-1633-2007.pdf)
・日本火山学会 「アフリカの火山・東北の火山」(http://www.kazan-g.sakura.ne.jp/J/koukai/98/hamaguchi.html)