TOP > 赤道直下3カ国 ケニア・コロンビア・インドネシア ‐良いコーヒーが育つ場所‐
ケニア、コロンビア、インドネシア。
人気のコーヒー産地であるこの3ヶ国には、地理上の共通点があります。
それは「赤道直下」に位置するという点です。
「赤道直下」と聞いて、皆様何を思い浮かべるでしょうか。
常夏の熱帯? スコール? トロピカルフルーツ?
今回は「赤道」「コーヒーベルト」といったキーワードからアプローチし、
良いコーヒーが育つ地理的条件を学び、実際にその条件下で育ったおいしいコーヒーを飲んでみよう!
という皆様の知的好奇心をくすぐる(マニアックな)企画です。
皆様のコーヒー選びがより充実したものになりますように。ぜひご覧ください。
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コーヒーベルト
‐想像よりもはるかに狭い?! コーヒーが育つ場所‐
よくコーヒー本やネット記事に出てくる「コーヒーベルト」という言葉があります。赤道を中心として南北両回帰線(南緯・北緯25度線)に挟まれた低緯度地帯のことです。 気温(年間平均気温と昼夜の寒暖差)、日照量、雨量、降雨パターン(明確な乾季があること)などの、コーヒーの栽培に必要な条件が満たされたエリアとして有名な言葉です。
一方で、実はベルトというのはやや誇張な表現であり、実際にコーヒーが収穫されている面積はベルト内の陸地の中でもわずか0.2%ほど。なんと、北海道と四国を足した面積と同じくらいなのです。コーヒーが育つ場所はかなり限定的で、おそらく想像されるよりもはるかに狭いのではないでしょうか。
というのも、コーヒーベルトのエリアには、年中一定の降水量のある熱帯雨林、逆に降雨の非常に少ない砂漠、あるいは標高が高くて寒冷すぎる山地などが多く含まれています。これらの場所は、日中の平均気温、日照量、降水量、降雨のタイミングなどの面でコーヒー栽培に適していないのです。
そして、コーヒー栽培に適した0.2%の陸地の中でも、私たちが取り扱うスペシャルティと呼ばれる高品質なアラビカ種のコーヒーを得ようとすると、さらにエリアは限定されます。
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良いコーヒーが育つ場所
‐緯度と気温、標高の関係性‐
コーヒー産地のほとんどは地理学上の熱帯にあります。熱帯といえば「年中暑い」というイメージがあり、そのせいもあってコーヒーは暑さに強い作物と思われがちですが、そうではありません。
一般的にアラビカ種のコーヒー栽培に適した日中の平均気温は18℃〜23℃とされています(カネフォラ種は+4~5度)。
平均気温が低い方が果実が時間をかけてじっくり成長するため質の高い酸が多く、そして密度の高いチェリーが育つといわれています(気温が低すぎると成長不足や病気のリスクもあるため、この塩梅はなかなか難しいところではありますが)。
そして、緯度が小さくなればなるほど(=赤道に近くなればなるほど)同じ標高の平均気温が上がりますので、赤道直下のエリアで高品質なアラビカ品種を求めること(=低い気温環境を求めること)はつまり、より標高の高いエリアを求めることになるわけです。
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高標高がもたらす恩恵
‐昼夜の寒暖差‐
この高標高はコーヒーにとってもうひとつメリットがあります。それが私たちも商品のご説明をする際によく使用する「寒暖差」です。これは「一日の中での気温の差」のこと。一日の寒暖差が大きいと、特に夜の気温が低くなると、コーヒーは種子内に糖類を蓄えることで自らが凍ってしまうことを防ぐといわれています。
この際に蓄える糖類は、焙煎後のコーヒーが素晴らしい風味・フレーバーを備えるために非常に重要といわれています。そのためか、高品質なコーヒーは寒暖差の大きい産地で栽培されるものが多い傾向にあります。
なんだか小難しい話が続きましたが、つまり質の高いコーヒーを生産するには「日中の平均気温が冷涼で、昼夜の寒暖差が大きいこと(※)」が大切であるということです。そのため、私たちは産地の「標高」というものをひとつの大事な指標として捉えています。
当店の商品ページには記載しておりますし、一般的なスペシャルティコーヒーのお店であれば産地情報として明記されていることが多いです。皆様も目についた際にはこの話を思い出していただければ幸いです。
もちろん、地形や天候、海流などの関係によって例外的な傾向を持つ場所はたくさんあります。加えて、標高以外の要素も品質には多分に影響します。「高標高=良い」というわけでは決してありませんので、「このお店で一番(標高の)高いコーヒーをちょうだい!」と注文するのはあまりおすすめいたしません。
※寒暖差が大きいこと・・・
寒暖差は大きすぎてもコーヒーチェリーに置く影響を与えるといわれており、アラビカ種の場合は19℃程度、カネフォラ種の場合は15℃程度が理想のようです。
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3ヶ国のコーヒーを飲み比べてみよう!
ここからは、赤道直下に位置する3ヶ国のコーヒーを紹介していきます。
各国の実際の生産現場については商品ページにて詳しく紹介しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。
1.ケニア
国のほぼ中心を赤道が貫くケニア。標高5,199mを誇る国内最高峰のケニア山は赤道直下にもかかわらず冠雪します。
そのケニア山南側の地域(主にエンブ、キリニャガ、ニエリの3県)は、ケニア山がもたらす高標高と寒暖差、さらには肥沃な火山灰土壌といった恵まれた栽培環境にあり、高品質なコーヒーを手掛ける農園やファクトリー(精製場)が多く存在しています。当店で扱う商品もほとんどこの地域のものです。
今回ご紹介するカイナムイファクトリーは中央州のキリニャガにある精製工場のコーヒーです。
2.コロンビア
同国南部を赤道が通るコロンビア。まず首都のボゴタが標高2,640mと高標高。ほぼ全域でコーヒー生産が可能ですが、特に南部は、当店でも扱いの多い注目の生産エリア。
アンデス山脈が3つに分岐し、標高2,000m前後〜3,000mほどの山塊が複雑に入り組みながら広がっているため、日照量や気温、降雨量や土壌などの違いにより
多様で高品質なコーヒーが生み出されています。
今回はそんな南部のナリーニョ県から「ラ・クンブレ農園」のコーヒーをご紹介いたします。
3.インドネシア
当店でも人気のコーヒー“マンデリン”はインドネシアの北スマトラ州およびアチェ州で生産されたアラビカ種のコーヒーで、その生産エリアは赤道直下に位置しています。
今回ご紹介するのは堀口珈琲が誇る最高峰のマンデリンの一つ「マンデリン "オナンガンジャン"」。標高1,400m〜1,500mという北スマトラ州の中でも標高の高いエリアで栽培されていることに加えて、
クラシック・スマトラと呼ばれるティピカ系品種であることも最高峰と謳う理由の一つ。
19世紀末に発生したさび病(コーヒーノキの病気)の甚大な被害とその後の耐病性品種への植え替えにより、スマトラ島では当時栽培されていたティピカ系品種はほぼ消失してしまいましたが、その中でも標高の高い僅かなエリアにおいて同品種が残っているのです。
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まとめ
「コーヒーベルト」という言葉は、赤道を中心として南北両回帰線(南緯・北緯25度線)に挟まれた低緯度地帯を指しますが、その広範なエリアの中でも高品質なコーヒーの栽培が可能なのは「平均気温が冷涼で、昼夜の寒暖差が大きい」ごく一部のエリアに限られます。
今回は赤道直下に位置するケニア、コロンビア、インドネシアの3ヶ国のコーヒーを端緒として、良いコーヒーが育つ環境についてご紹介しました。
3ヶ国のコーヒーを飲み比べていただくとわかる通り、同じ赤道直下の環境下で生産されたコーヒーでも、その風味の特徴は三者三様です。
平均気温や日中の寒暖差はあくまで良いコーヒーに育つための条件の一つ。地形や土壌、日照量、品種の違い、施肥などの栽培管理、精製方法など、コーヒーの風味は生産段階における様々な要素に影響を受けます。
そんな奥深いコーヒーの世界の一端を、今回の特集で感じていただけましたら幸いです。
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