TOP > 飲んで学べる スペシャルティコーヒー -ウォッシュトとナチュラル 編-
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今回のテーマは「ウォッシュトとナチュラル」
今回はスペシャルティコーヒーを味わうための基礎、「ウォッシュトとナチュラル」を取り上げます。
ウォッシュト・ナチュラルとは代表的な生豆(焙煎する前のコーヒー豆)の加工の種類で、コーヒーの味わいに大きな違いをもたらします。コーヒー好きを自負する皆さまにはぜひ知っておいていただきたい違いです。
合言葉は
「スペシャルティコーヒーの基本:ウォッシュト
スペシャルティコーヒーを広げる:ナチュラル」
です。
まずウォッシュトコーヒー2種・ナチュラルコーヒー2種を3つのステップで味わいながら理解を深めていきます。このテイスティングを体験するだけでも、今後のコーヒー選びは格段に楽しくなり、味わい方も深まります。
さらに理解を深めたい方のために、記事後半にウォッシュト・ナチュラルについてたっぷり書きました。4種のコーヒーを飲み比べながら読みきる頃には、スペシャルティコーヒーの階段をだいぶ登っているでしょう。楽しみながら正しい知識を身に着け、いつの間にか“普通のコーヒー好き”から逸脱しちゃっている、というのが本特集のゴールです。ぜひ最後までお付き合いください。
特別な飲み比べセットのご紹介
今回の企画に合わせ「ウォッシュトとナチュラル飲み比べセット」を期間限定で発売します。 ウォッシュト2種とナチュラル2種の計4種類のコーヒー豆を100gずつ計400gにした、手に取りやすいセット商品です。
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ウォッシュトとナチュラルを
飲み比べてみよう
さっそく飲み比べていきましょう。
飲み比べは3つのステップで行います。
それぞれのステップで2種のコーヒーを比較テイスティングしながら、ウォッシュトとナチュラルの風味を紐解いていきます。
焙煎度は全て「シティロースト」(中深煎り)で揃えました。
以下の抽出レシピを確認しながらどのコーヒーも同じように抽出してください。比較テイスティングする2種を同時に抽出できればベターですが、間をおかず順番に抽出でもOKです。

【抽出のコツ】
注ぎ始めはじっくり焦らず、少量の湯を静かに注いで粉にお湯を浸透させます。30秒前後でサーバーに抽出液がポタポタ落ち始め、注ぐ量を少しずつ増やして60秒前後で抽出液のポタポタが線状になるように。その後は表に記載の抽出時間くらいで目標の抽出量に達するよう注ぐペースを早くしていきます。
【飲み比べステップ1】
ウォッシュト×ナチュラル
同じ生産者が作ったウォッシュトとナチュラルを直接飲み比べます。いきなりウォッシュトとナチュラルの違いを見ていきましょう。
【用意するコーヒー】
・エチオピア 「ウォテ」 シティロースト
・エチオピア 「ウォテ ナチュラル」シティロースト
【味わい解説】
一口目は肩の力を抜いておいしさを味わってみましょう。
まずはウォッシュトから。
エチオピア・イルガチェフェエリアのコーヒー初体験の方は驚かれたでしょうか。フローラルな香りに瑞々しい果実感が充実した、イルガチェフェらしいおいしさです。
余韻まで華やかを感じたら、次にナチュラルを一口。
やはりとても華やかで果実味豊かですが、ウォッシュトとは異なる印象を受けたと思います。結構わかりやすく違いますね。
二口目以降は「果実感」に注目しながら、ウォッシュトとナチュラルの違いを明確にしてきましょう。
ウォッシュトをもう一度口に含み、果実を具体的に捉えてみます。
ベースは黄色い柑橘です。明るいトーンで、瑞々しい印象です。
白い果実もいます。清涼感を伴う華やかな香りと甘さは、白ブドウやピーチを彷彿とさせます。甘さがしっかり備わっているのでアプリコットのようなニュアンスも感じられるでしょうか。
続いてナチュラルの果実味を丁寧に感じてみましょう。
ウォッシュトの柑橘や白い果実に、ナチュラルならではの熟した果実の甘さ・ベリー系果実の華やかなフレーバーが加わっています。
香りや味の違いをしっかりと感じたら、こんどは「テクスチャー」に意識を向けてもう一口。いずれもなめらかなテクスチャーですが、ナチュラルの方が量感が増してよりなめらかです。ウォッシュトの瑞々しい果実感と、ナチュラルの熟した果実の印象には、このテクスチャーの微細な違いも寄与しています。
【飲み比べステップ2】
ウォッシュト×ウォッシュト
続いて2つのウォッシュトを飲み比べます。どちらも名産地として名高いグァテマラ・アンティグア産とエチオピア・イルガチェフェ産です。ウォッシュトらしさの理解を深めながら、名産地の個性も一緒に楽しみましょう。 同じウォッシュトでも産地や品種によって風味は多様に表れるというスペシャルティコーヒーらしい楽しみです。
【用意するコーヒー】
・グァテマラ 「ラ・トラベシア農園」 シティロースト
・エチオピア 「ウォテ」 シティロースト
【味わい解説】
ステップ1で味わったエチオピアのウォッシュトの風味をもう一度確認したら、グァテマラのウォッシュトコーヒーを飲みましょう。
同じウォッシュトでも味わいはだいぶ異なりますね。
「こんな違うの?」と驚いたら、その違いを丁寧に捉えていきます。
まず果実感。
エチオピアはさまざまな果実が感じられますが、グァテマラの果実感は柑橘がメインです。柑橘のニュアンスもエチオピアの明るくはっきりとした印象と比較すると、柔らかさ・甘さのある和柑橘のような優しい印象です。
香りの印象は、口に含んだ瞬間から果実やフローラルが明瞭に香るエチオピアに対し、グァテマラは余韻にかけてほのかにフローラルが鼻に抜けていきます。
テクスチャーはどうでしょうか。どちらもなめらかなテクスチャーが備わっていますが、グァテマラの方が量感があり、心地よい“コクと甘み”として感じられます。
全体の印象は「バランス良くマイルド」です。
おいしさを構成する要素(酸味・甘さ・苦味・香り・質感)の何かが突出している訳ではなく、各要素がしっかりと備わっていて均整が保たれています。何杯でも、飽きることなくおいしく飲めてしまいそうな味わいです。
アロマティックな個性を備えるエチオピア・イルガチェフェ、ニュートラルな風味のグァテマラ・アンティグア。それぞれの産地の個性をわかりやすく体験できました。
そして、これがウォッシュトらしさでもあります。
クリアな味わいに仕上がりやすく、加工の工程で+αの風味が付きにくいウォッシュトだからこそ、産地や品種の個性をわかりやすく楽しめるのです。
【飲み比べステップ3】
ナチュラル×ナチュラル
最後にナチュラル同士を飲み比べます。ステップ1で飲んだエチオピアのナチュラルと、中米の生産国コスタリカのナチュラルです。どちらも磨きに磨かれクリーンさをベースにもつスペシャルティコーヒー時代のナチュラルです。きれいな味わいの中にあるナチュラル精製の風味とそれぞれの産地の個性を捉えていきます。
【用意するコーヒー】
・エチオピア 「ウォテ ナチュラル」シティロースト
・コスタリカ 「【アルトス・デル・アベホナル】ラ・シーマ ナチュラル」 シティロースト
【味わい解説】
ステップ1で味わったエチオピア・ナチュラルの風味をもう一度確認したら、コスタリカのナチュラルを飲んでみましょう。
「共通点もあるけど、結構違う」そんな印象でしょうか。
まずは共通点から見ていきます。
どちらも「熟した果実」「ベリー系果実」の華やかで甘い果実味が感じられますね。舌触りもなめらかです。
これがナチュラル特有の風味です。
次は違いに目を向けてみます。
エチオピアは感じ取れる果実味の種類が多く(柑橘・白い果実+ベリー系果実)、その印象も瑞々しい〜熟したまで幅広く感じられます。
コスタリカの果実感は柑橘+ベリー系果実で、熟した印象がより強く感じられます。ドライフルーツや、どこか洋酒を想起させる香りも漂います。テクスチャーも厚みがありきめ細やかです。
2つの違いは生産環境がもたらす“違い”であり、それぞれの産地の個性でもあります。
“産地らしさ”に、ナチュラル特有の風味が加わる。これがスペシャルティのナチュラルです。
3段階の飲み比べを通して、ウォッシュトとナチュラルの風味の違いだけでなく、ウォッシュト間・ナチュラル間にも大きな違いがあることを感じていただけたはずです。たった4種の飲み比べですが、生豆の“加工方法”がもたらす“違い”だけでなく、“生産環境”がもたらす“違い”やその“相互作用”までも垣間見たことになります。実にスペシャルティコーヒーらしい楽しみ方です。
みなさんはどのコーヒーが最も気に入りましたでしょうか。多くの方がまずナチュラルにハマり、その後じわじわとウォッシュトの良さを再認識していくルートを辿るのでは、と予想しています。
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スペシャルティコーヒーの
「精製方法の基本」を学ぼう
ここからは知識や考え方もインプットしていきましょう。今後のコーヒーの楽しみ方にきっと役立つはずです。
“精製”方法とは
ウォッシュト・ナチュラルはスペシャルティコーヒーの風味の多様性を支える大切な加工方法の種類で、“精製”と言います。英語表記だと“Processing”です。堀口珈琲の場合ラベルの右下に記載されていますね。

ウォッシュト・ナチュラル以外の精製方法も派生的に発達していますが、まずはウォッシュト・ナチュラルをしっかり理解することが大切です。
では生豆ができるまでを追いながら精製の基礎を理解していきましょう。
上の写真は収穫したばかりのコーヒーの果実です。サクランボのような見た目からコーヒーチェリーとも呼ばれています。このコーヒーチェリーの中に生豆は入っています。「生豆=種子」です。

コーヒーチェリーから色々なものを外して種子=生豆を取り出す。この加工工程が“精製”です。“ウォッシュト”と“ナチュラル”はその代表的手法で、最初に発達したシンプルな手法が“ナチュラル”精製、その後“ウォッシュト”精製が誕生しました。
それぞれの方法をイラストで見ながら確認していきましょう。

イラスト右側、ナチュラルの工程はシンプルで分かりやすいですね。コーヒーチェリーをそのまま乾燥させ、果皮・果肉・ミューシレージ・パーチメント=“外側のもの”を一気に取り除いて生豆を取り出します。
一方、イラスト左側のウォッシュトは、何やら細かい工程に分かれています。1つ1つ見ていきましょう。
まず、収穫したコーヒーチェリーから果皮と果肉を取り除きます。
次に、種子を覆う殻にしっかりと固着している粘質物のミューシレージを発酵させ、取り除きやすくします。
それからミューシレージを洗い流し、パーチメント(内果皮)がついた状態の生豆を乾燥させ、最後にパーチメントを取り除いて生豆を取り出します。
ウォッシュト精製はコーヒーチェリーから色々なものを外した後に乾燥させるのに対し、ナチュラル精製は果実のまま乾燥させます。この“乾燥させる時の状態の違い”が、風味に大きな影響を及ぼすのです。
ウォッシュト:コーヒーチェリーから果肉や粘質物を外した後に乾燥
ナチュラル:果実のまま乾燥
スペシャルティコーヒーの基本
「ウォッシュト」
スペシャルティコーヒーのおいしさを支えるのはクリーンカップ。簡単に言うとネガティブな味わい、変な味わいがないことです。本来フローラルな華やかさを持つコーヒーであったとしても、青臭さや穀物臭・渋みなどが入り込むと台無しになってしまい、スペシャルティとは言えなくなってしまいます。
ネガティブをもたらす要素は複数ありますが、その中でも“未熟”や“過熟”といったチェリーの熟度は収穫という大変な作業でコントロールする必要があります。
しかし、どんなに収穫をがんばってもある程度は未熟や過熟が混入してしまいます。そのため、スペシャルティコーヒーらしい味わいに仕上げるためには、収穫後にも未熟や過熟を取り除く必要があります。
ここで注目するのが「ウォッシュト精製には未熟・過熟を取り除く工程」が各所に散りばめられているということです。ウォッシュト精製を施すことで自然と収穫精度をリカバーしてくれるのです。
<リカバーポイント>
1..チェリーを水槽に入れ、水に浮く過熟を取り除く
2.果皮・果肉の除去装置の圧を柔らかい完熟のみ剥けるよう設定し、硬く剥けにくい未熟をはじいて取り除く
3.ミューシレージを発酵させた後の水洗時に“軽いもの=未発達のもの”を浮力を使って取り除く
4.乾燥場の形状によってはできないこともあるが、乾燥時に“未熟”を手選別で取り除く
ウォッシュト精製はスペシャルティコーヒーの前提条件であるクリーンカップを確保するための工程が多段階で備わっている精製、スペシャルティコーヒーの基本の精製です。
スペシャルティコーヒーを広げる
「ナチュラル」
ウォッシュト精製と違ってナチュラル精製はとてもシンプルな加工方法です。コーヒーチェリーをそのまま乾燥させ、果皮・果肉・ミューシレージ・パーチメント=“外側のもの”を一気に取り除いて生豆を取り出す、でしたね。工程が少なく、ある意味優れた手法です。
しかし、とてもシンプルな加工方法であるがゆえにウォッシュトに備わっている「未熟・過熟の除去機能」はありません。
スペシャルティコーヒーらしいクリーンな風味を確保するためには、収穫精度を高めることがウォッシュト以上に重要となります。
さらに、チェリーのまま乾燥させるという手法にはリスクが伴います。果皮・果肉などを纏っていれば乾燥は当然進みにくくなります。高温や多湿、雨期と乾期がはっきりせずチェリーの乾燥時期にも雨が降ってしまうといった環境下では、乾燥のハードルはさらに高まり、ナチュラル精製の品質リスクは飛躍的に高まってしまいます。
ナチュラル精製はウォッシュト精製と比べて未熟や過熟の除去が難しく、乾燥時のリスクも高い精製。風味を台無しにしてしまうネガティブな風味が出やすい精製なのです。
「そんなに大変なら、なんでわざわざナチュラルにするんだろう……」という疑問が頭に浮かんできそうです。
ここで第ニ章の飲み比べのパートを思い出してみましょう。
“ナチュラルの味わい”には、ベリー系果実の華やかさ、熟した果実の甘み、洋酒、ドライフルーツといった表現を用いました。これらは、ウォッシュトでは得られないナチュラルならではの風味です。困難やリスクを伴いながらも高品質なナチュラルを作ろう!とトライするのは、この特有の風味を楽しみたいためです。

クリーンカップが確保されたウォッシュトが「生産環境や品種の個性を直接映す鏡」だとしたら、ナチュラルはそこに+αの個性をもたらしてくれます。
前章で「ウォテ ウォッシュト」と「ウォテ ナチュラル」を飲み比べて体験しましたね。ウォッシュトにはエチオピア・イルガチェフェ地区の特徴であるフローラルな華やかさや瑞々しい果実感がきれいに感じられ、ナチュラルではそこにベリーのような果実感や滑らかな質感が加わりました。産地の個性にナチュラル精製の風味が加わる。これが、スペシャルティコーヒーのナチュラルです。
合言葉は
「スペシャルティコーヒーの基本・ウォッシュト、スペシャルティコーヒーを広げる・ナチュラル」
でしたね。
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ナチュラルに適した産地と
適していない産地
では、全ての産地でナチュラル精製のスペシャルティコーヒーを安定して生産できるのでしょうか?
残念ながらそんなことはありません。堀口珈琲において、ほぼ通年で提供している産地はエチオピアだけです。
理由は
産地の「気候」にあります。
ナチュラルは乾燥時の品質リスクが高い精製で、チェリー乾燥時の降雨や多湿は大敵です。気候条件はコントロールすることができないため必然的にナチュラル精製に適した産地と適していない産地にわかれるのです。
今回テイスティングしたエチオピアとコスタリカを例に、産地の気候(生産環境)とナチュラル精製について具体的にみてみましょう。
ナチュラル精製に適した産地
エチオピアは雨季と乾季がはっきりと分かれている気候のため、チェリーを乾燥させる時期は乾燥した気候でナチュラル精製を施しやすい環境です。伝統的にナチュラルが採用されてきた産地である一方で、一部地域では品質の安定や向上を目的にウォッシュト精製も発達しています。スペシャルティコーヒー時代に突入すると風味の多様化を目的にした高品質ナチュラルの生産も盛んに行われるようになりました。
ウォッシュト・ナチュラル双方で高品質なコーヒーを潤沢に供給してくれる稀有な産地です。

エチオピアと紅海やアデン湾を挟んだ中東アラビア半島に位置する「イエメン」についても少し触れておきます。イエメンはコーヒー産地の中でも極端に雨量が少なく、チェリーを乾燥させやすい=ナチュラル精製を適切に施しやすい環境の産地です。一方で水資源の少なさからか、ギシルという乾燥したチェリーの果肉を煎じて飲む風習があるからか、イエメンではウォッシュト精製は発達していません。 エチオピアのようにウォッシュト・ナチュラル双方を楽しめる産地ではなく、世界的にも珍しいナチュラルのみの産地です。
ナチュラル精製に不向きな産地
コスタリカは乾季と呼ばれる時期でも降雨の影響を受けやすく、エチオピアやイエメンのように乾燥した条件が安定して続く気候ではありません。エリアによって降雨量・湿度の差もありますが、気候条件的には“ナチュラルに向いていない”産地です。
伝統的にウォッシュトが採用されてきた生産国で、環境立国でもあるコスタリカでは水質保護を目的として2000年頃から排水量が制限されるようになり、多くの水を必要としない機械式のウォッシュト精製が先進的に普及しています。
一方で、近年では少なくない生産者がウォッシュトだけでなくナチュラルにも取り組んでいます。ナチュラル特有の風味によって「付加価値を高めるため」です。
コスタリカでは2000年代から2010年代にかけて小規模農家がコーヒーチェリーの加工場(精製施設)を作り、栽培から精製までを自らの手で施して品質を追求する「マイクロミル」が発達しました。

彼らが自分たちのコーヒーの付加価値を高める手段として注目した一つが「精製」です。
特徴的な風味が付加されるナチュラル精製やハニー精製(※)によって他との差別化を図り、そうしたコーヒーが品評会で評価されたことも相まって、ムーブメントの様相を呈してウォッシュト以外の精製が広がったのです。
※機械の設定によって意図的にミューシレージを残して乾燥させる方法。コスタリカで機械式のウォッシュトが普及する中で派生的に発展した。
とはいえ、繰り返しになりますが気候条件的には“ナチュラルに向いていない”産地です。
乾燥が適切になされないと過度な発酵臭が伴うきつい風味になやすく、高品質なナチュラルをつくるためにはきちんとした設備で、きちんとした乾燥管理が不可欠です。

堀口珈琲はコスタリカの複数の生産者たちと長年品質を追求してきましたが、ナチュラルをリクエストしているのは今回テイスティングした【アルトス・デル・アベホナル】だけです。
理由は「エリア」と「高い技術」です。
私たちは主に「タラス」エリアと「チリポ」エリアのコスタリカコーヒーを扱っていますが、チリポは湿潤な気候であるため、ナチュラルには不向きです。チリポよりは乾燥した気候のタラスがよく、タラスの中でもより乾燥傾向の強い北西部のレオンコルテスがナチュラルの品質を追求しやすい環境です。
そのレオンコルテスに位置するマイクロミルできちんとした乾燥設備を保有し、乾燥管理を徹底して高品質なナチュラルに仕上げる技術と知識を備えているのが【アルトス・デル・アベホナル】です。

ここで「あれ、アベホナル以外にもコスタリカのナチュラル飲んだことあるよ?」というナチュラルマニアの方がいらっしゃるかもしれないので補足しておきます。これまでアベホナル以外のコスタリカナチュラルも複数取り扱ってきましたが、それらは私たちがリクエストしたものではなく、買い付けのオファーを受け、水準以上の品質を確認できたナチュラルです。
いずれも品質を追求する生産者たちですから、乾燥時の天候条件が良く、うまく乾燥を管理できればきれいなナチュラルに仕上がることもあります。しかし、彼らに対し失敗するリスクのあるナチュラルを安易にリクエストすることはせず、あくまで気候にマッチしたウォッシュトをリクエストしています。
ナチュラル精製は風味の強さから人気が高まり、コスタリカ以外にも様々な産地で生産されるようになりました。それはナチュラル精製に向かない気候条件でも生産されていることを意味します。設備を充実させ十分な管理の下で行えば、不向きな気候条件下でも高品質に仕上げることもできなくはありません。しかし、失敗するリスクは高まるため生産者に対し安易にリクエストすべきではありませんし、あくまで少量であれば品質を担保できる、くらいに考えておくべきでしょう。

ナチュラル人気から派生して、近年では“アナエロビック”ナチュラルの流通も増えています。この記事をご覧の皆さまの中にも、コーヒー屋さんの店頭で見たことある、飲んだことがあるという方もいるかもしれません。アナエロビックナチュラルは収穫したコーヒーチェリーを密閉タンクで嫌気性発酵させてから乾燥させる手法で、言わば「ナチュラルよりももっともっと派手な風味にしよう」と発酵によって風味を付加する特殊な加工です。
ナチュラルですら品質リスクの高い精製方法ですから、アナエロビックナチュラルはさらにネガティブな風味が発生しやすく注意が必要です。実際、発酵由来の刺激的な味や香りが支配的なものや、乾燥不良によるネガティブな風味が伴うものも多く、その土地の気候や風土が生み出す産地の個性・伝統的な品種がもたらすきれいなおいしさ、といったスペシャルティコーヒーらしさを期待するのは難しいでしょう。
いわゆる“コーヒー”とは異なる方向の風味を楽しむ飲み物だと私たちは捉えています。
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おわりに
ナチュラルの話が続きましたが「ナチュラルは個性的な風味なので、ウォッシュトよりも優れている」ということではありません。
スペシャルティコーヒーの風味の世界では、「生産環境を鏡のように映しクリアに個性を表現するウォッシュト、ウォッシュトの個性に修飾するナチュラル」と表現できるでしょう。
合言葉も忘れずに。
「スペシャルティコーヒーの基本:ウォッシュト
スペシャルティコーヒーを広げる:ナチュラル」
でしたね。
精製方法の違いは風味に“多様さ”をもたらすものです。生産環境に応じて適切な手法を施すことで高い品質の生豆に仕上げることができるということを忘れずに楽しんでいきましょう。
スペシャルティコーヒーの“多様さ”は、生産される場所、品種、焙煎度など他にも様々な要因でもたらされます。〇〇エリアの、△△品種で、焙煎度は□□、精製は――、といった風に。これらの組み合わせによってもたらされる多様さによって、スペシャルティコーヒーの楽しみは尽きることなく広がっています。
飲み比べて違いを理解し、背景にある知識や考え方を学ぶことで、コーヒーを選ぶ楽しみが増え、味わい方も深まります。シリーズ企画「飲んで学べるスペシャルティコーヒー」のウォッシュトとナチュラル編、長文にお付き合いくださりありがとうございました。

