コーヒーの風味は一期一会です
私たちが普段飲むコーヒーは、産地によって、品種によって、標高や気候によって、精製によって、輸送によって、焙煎によって、ブレンドによって、選別によって、抽出によって、どんな季節、どのようなシュチュエーションで味わうかによって……、いとも簡単に味が変わります。
農家は、与えられた土地の風土の中で造り手の意志をほんの少し入れながら、コーヒーを作っていきます。10年以上堀口珈琲で細々と働きコーヒーを飲んでいると、産地ごとに“素晴らしい年”と“課題がある年”というのが繰り返しあり、
意識の高い生産者が集まっていても、変えられない気候変動があり、情勢があり、農作物として当然の風味のゆらぎを感じてきました。
さまざまな状況でいろいろなコーヒーを味わってきて、だんだん「その時々のゆらぎを楽しむことが、もっとコーヒーを身近に感じることができるのではないか」と感じるようになってきました。
ゆらぐ風味から産地に想いを馳せてみる。出来の素晴らしい年は盛大に盛り上げて、課題がある年は焙煎や選別、ブレンドをあわせていく。
そうやって生産者の顔を思い浮かべながら品質を保つために自分たちを鼓舞していく。いろいろな年の風味を味わいながら、産地がぐっと近くに感じるようになりました。
「コーヒーの風味は一期一会です」
なんだ、今更それを言うのか。
という感じではありますが、そういったものが自分の内に広がる瞬間も日々の中にはやはりあって、今回はそういった『ゆらぎ』をテーマとしたブレンドを創作したいと思いました。
ROASTERS' BLEND 2024「ゆらぎ」
と、いうわけで今年のロースターズブレンドは「ゆらぎ」をテーマに創りました。
農作物としての風味のゆらぎ、さまざまな影響を経て、今日の品質が手元にあるわけですが、個人的2024年のベストカップ5種類を駆使しています。
配合を考えている内になんだかチャレンジしたくなり、素材をあまり変えず2種類のブレンドをつくりました。
配合比と焙煎度を微妙に変える中で、風味のグラデ―ション(諧調)のようなものを感じていただきたいなと思い、販売期間の前半(ロースターズブレンド1)と後半(ロースターズブレンド2)で配合が変わります。
微妙な違いに気づきを得てコーヒーの品質を保つことは、本当に些細なことの積み重ねばかり、そんなゆらぎも含めて楽しみたい。
素材一つの影響力、比率のインパクト、そういったブレンドとしての“風味のゆらぎ”をぜひ一緒に感じていただければと思います。
すっかり涼しくなり、コーヒーがおいしい季節の到来です。
コーヒーのある生活を、うんと楽しんでください。
ROASTERS'BLEND 1 ”広がり”
まず前半は、同割のブレンドです。
それぞれの素材がぶつかることなく、かといって単調でもなく、ゆるやかに広がる風味。
定番ブレンドの#7を深化させたような、骨格のしっかりとしたまんまるの甘い深煎りです。
●タンザニア「ハイツ農園」フレンチロースト
●グァテマラ「サンタカタリーナ農園」フレンチロースト
●コスタリカ「【ロス・クレストネス】エル・アルト ラ・クンブレ」フレンチロースト
●コロンビア「サンフランシスコ農園」フレンチロースト
配合比=1:1:1:1
ROASTERS'BLEND 2 ”移ろい”
※11/6(水)から販売開始予定
後半は、コスタリカを、より香りがはっきりしたエチオピアに変更します。
このエチオピア「ゴロ・ベデッサ」の華やかな風味を生かすために、タンザニア「ハイツ農園」を敢えて極深煎りにして、華やか→苦み、という風味のグラデーションをよりはっきりと感じられるように調整しています。
また、ハイツ農園を深くするとより複雑な風味になるので、コロンビア「サン・フランシスコ農園」の比率を少し控え目にすることで引き算をして、全体のバランスを整えました。
●タンザニア「ハイツ農園」イタリアンロースト
●エチオピア「ゴロ・ベデッサ ウォッシュト」フレンチロースト
●グァテマラ「サンタカタリーナ農園」フレンチロースト
●コロンビア「サンフランシスコ農園」フレンチロースト
配合比=3:3:3:1
ロースターズブレンド1 素材の紹介
●タンザニア「ハイツ農園」
堀口珈琲のタンザニアといえばブラックバーン農園の一強。そう言っても過言ではないくらい、このタンザニアに比肩するような素晴らしいコーヒーにはもう何年も出会うことはありませんでしたが、2023年に彗星のごとく現れたのがこのハイツ農園です。
彗星のごとくといっても、生豆調達担当が長年ブラックバーンに匹敵するタンザニアコーヒーを探し続けていた結果です。
アフリカの自然豊かな大地で育まれた、唯一無二の「力強いコク」が特徴的なコーヒー。ついつい深い焙煎度で仕上げてしまいます。
もう既にブラックバーン農園と共に堀口珈琲のタンザニアコーヒーを引っ張る存在となっています。
●グァテマラ「サンタカタリーナ農園」
アカテナンゴ火山の東斜面の標高1,600mから2,000m超という恵まれた生産環境で、伝統品種「ブルボン」の栽培を継続し、優れた設備と品質管理意識の高さによって精度の高いウォッシュトを作り続けています。
2019年に火山噴火の影響などで収穫量が少なくなった時期もありましたが、味わいはぶれることがなかった素晴らしい農園です。ペドロさんの陽気な性格は色々な困難も悠々に乗り越えてしまうのでしょう。
柑橘の酸と甘み、重すぎず適度に密度のある質感、主張しすぎない華やかさ。これらがバランスを保ちながら備わっている稀有なコーヒーです。
●コスタリカ「【ロス・クレストネス】エル・アルト ラ・クンブレ」
品質に対して非常に真面目で決して手を抜かない【ロス・クレストネス】。
安定してコーヒーが提供できるようになってからも、堅実に農地の拡大や品質向上のための設備投資など取り組みをひたむきに続けており、品質がカップに現れています。
15年近い長い付き合いの農園ですが、「エル・アルト」農地内で新植した高標高区画のコーヒーを1つのロットにまとめ、今期はじめて届いたのが「エル・アルト ラ・クンブレ」。
今までを凌駕するフローラル、スムースさを持ちながら、チリポエリアらしい品の良い甘み。焙煎していても味のバランスが崩れにくく、しなやかなコーヒーです。
抜群の安定感の中にとびきりの驚きがありました。
●コロンビア「サンフランシスコ農園」
「サン・フランシスコ農園」は、コロンビア南部ナリーニョ県のコーヒーです。 アンデス山脈がもたらす高い標高を有し、県都パストの標高は約2,500m。
ここまで標高が高いと夜間の厳しい冷え込みでコーヒー栽培は難しいと言われますが、ほぼ赤道直下に位置するために日照量が潤沢で、日中に注いだ日光はアンデス山脈の谷底で蓄積され、夜になるとその熱は暖かく湿った空気となって上昇して夜間の寒さからコーヒーを守ってくれているそうです。
サン・フランシスコ農園は深く焙煎することで、複雑さを増した柑橘の果実感にしっかりしたコクの中にビターチョコレートを思わせる甘苦さが加わります。継続して取り扱っている優良生産地ですが、今年の出来は最高です!