TOP > 飲んで学べる スペシャルティコーヒー -焙煎度編-
今回の“飲んで学べる”テーマは「焙煎度」。
毎年題材となるシングルオリジンを変えながら、3度目の焙煎度編です。
毎回「浅煎りに目覚めた」「深煎りのおいしさを知った」といった反響のお声を沢山いただく内容を、今年もお届けしたいと思います。今回題材に選んだのはタンザニア「ブラックバーン農園」。堀口珈琲の20年来のパートナー生産者で、人気シングルオリジンの一つです。
「ブラックバーンきた!」というファンの方も、今回初の方も全く問題なくお楽しみいただける内容です。
この機会にぜひ体験してみてください。
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今回のテーマは「焙煎度」による味わいの違い
2010年代に米国からもたらされた“サードウェーブ”というムーブメント以降、「スペシャルティコーヒー=浅煎り」という誤解が広まり、日本のスペシャルティコーヒーの世界に浸透しています。
もちろん浅煎りのコーヒーには浅煎りらしいおいしさがあり、スペシャルティコーヒーのおいしさの一面を表現してくれます。一方で、深煎りにも特有のおいしさがあり、おいしさの別の側面を見せてくれます。
今回の“飲んで学べる”では「焙煎度」という視点からスペシャルティコーヒーを味わい、理解していきましょう。

ここで質問です。
みなさんはどの焙煎度が好きですか?
「気にして飲んでないなー」
意外にこの答えが一番多いのではないでしょうか。
スペシャルティコーヒーは生産者や精製といった素材の情報が多く、焙煎度まで気にする余裕がありませんよね。しかし、焙煎度は味わいを大きく左右するポイントです。
焙煎度を理解することで、自分の好みを把握しやすくなり、その時に飲みたいコーヒーを選択しやすくなります。
「酸味のないコーヒーが好きだから深煎りが好き」
「そのコーヒー本来の個性を楽しめる浅煎りが好き」
こんな回答が思い浮かんだとしたら、こだわりがある方ですね。ですが、もしかしたら焙煎度について誤解されているかも……?
改めて焙煎度に向き合っていただくことで新たな気付きが得られるはずです。
その先にはもっと広いコーヒーの楽しみが待っています。

今回は、同じ素材を3つの焙煎度で煎り分けたものを飲み比べながら、それぞれの焙煎度で味わうポイントを理解していきます。
この体験を経ることで、こだわりがある方はいつもの焙煎度をより一層おいしく、気にしていなかった方は普段のコーヒー選びがより楽しく、よりスムーズになることをお約束します。
そしてその先には、浅煎りも深煎りも飲み分けて楽しむ、真のスペシャルティコーヒーの世界が待っています。
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3つの焙煎度を飲み比べてみよう
題材となるタンザニア・ンゴロンゴロエリアの「ブラックバーン農園」。浅煎りから極深煎りまで、どの焙煎度でも“おいしさ”が担保されるとっておきの逸材です。ハイロースト(中浅煎り)、シティロースト(中深煎り)、フレンチロースト(深煎り)3つの焙煎度に煎り分けました。飲み比べ体験用に各100gずつ計300gのセットもご用意しています。
タンザニア「ブラックバーン農園」の風味傾向
3つの焙煎度で比較テイスティングを始める前に、タンザニアの風味傾向とブラックバーンの特徴を整理しておきましょう。
<タンザニア産の風味傾向>
・「マイルドさ」と「柑橘のニュアンス」
ケニアやエチオピアといったアロマティックなコーヒーを産出する国が並ぶ東アフリカにおいて、タンザニアのコーヒーは中米産に通ずるマイルドな味わいで、オレンジ色の柑橘果実が豊かに感じられるのがタンザニアのベースの風味です。
・ほどほどに濃縮感があり、ほどほどに力強い
東アフリカらしい濃縮感や力強さはあるものの、ケニアのような濃縮感!力強い!ではなく、“程よい”というイメージ。中米のマイルドコーヒーをやや力強くしたバランスです。
その中でも「ブラックバーン農園」は
・味わいの要素全体が一般的なタンザニア産よりも多く、力強さ・濃縮感がある
・きめが細やかで繊細さも感じるテクスチャーや、しっかりとフローラルが香る華やかさも兼ね備えている
といった感じです。
こうしたタンザニア「ブラックバーン農園」の特徴が、焙煎度の進行と共にどのように表情を変えながら現れてくるのか、丁寧に味わっていきましょう。3つの中でもっとも焙煎度の浅いハイローストからスタートし、順番にテイスティングしていきます。
各焙煎度の“らしさ”を味わう上で「いれ方」も重要です。焙煎度ごとに抽出レシピは変わります。「いつも通り」「感覚的に」いれるのではなく、【抽出のコツ】を確認してから抽出し、【味わい解説】に目を通しながら味わっていきましょう。
ハイロースト(浅煎り)を味わう
【用意するコーヒー】
・タンザニア 「ブラックバーン農園」 ハイロースト
【抽出のコツ】
ハイローストは明るく快活な酸味や華やかな香りを「かろやか」に楽しむ浅煎りのコーヒーです。濃くいれすぎるときつい味になってしまうので、抽出は「さらっと、かろやかに」が基本です。

<ポイント>
粉量に対する抽出量は3つの焙煎度の中で最も多い(=濃度が最も薄い)レシピです。
注ぎ始めは少量の湯を静かに注いで粉にお湯を浸透させ、20秒前後でサーバーに抽出液がポタポタ落ち始め、注ぐ量を少しずつ増やして40秒前後で抽出液のポタポタが線状になるように。その後は表に記載の抽出時間くらいで目標の抽出量に達するよう注ぐペースを早くしていきます。
普段深煎りをメインに飲まれている方は「こんなに勢いよくお湯を注いじゃっていいの?」と思うかもしれませんが、大丈夫です。さっぱりといれることで、きれいな酸、華やかな香りを引き出します。
【味わい解説】
まずは肩の力を抜いて“浅煎りらしいおいしさ”を感じましょう。
口に含むとさっそく華やかな香りが鼻を抜けて広がります。その後には瑞々しい果実感も続きます。明るく快活で、瑞々しくて、華やか。かろやかに飲み進めることができるおいしさのコーヒーです。
続いて、風味を構成する要素をひとつひとつ丁寧に捉えてみます。
まず香り。
口に含むとすぐにフローラルが広がります。「ふわり」というよりも「ぶわっと」と形容したくなるほどです。しっかりと香ります。
酸味はどうでしょう。
しっかりとした量の酸味を捉えることができると思います。といっても「酸っぱい・きつい」といった刺激的な質ではなく、他の要素とのバランスの中でおいしさを感じられる酸味です。
甘さもしっかり感じられます。ブラウンシュガーのような優しい甘さです。苦みはほとんど感じられないと言っていいレベルでしょう。
舌の上で転がすようにして質感(テクスチャー)にも意識を向けてみます。程よい量感があり、きめ細やかさも感じられるとても心地よい舌触りです。
香り・味・質感をそれぞれ丁寧に捉えたら、最後にもう一度全体の風味を感じてみましょう。
アタックからフローラルな香りが広がり、オレンジを彷彿とさせる明るい果実感が続きます。心地よい甘みやコクも伴うことで風味の均整が保たれていて、余韻までフローラルと果実の華やかな印象が持続します。
シティロースト(中深煎り)を味わう
【用意するコーヒー】
・タンザニア 「ブラックバーン農園」 シティロースト
【抽出のコツ】
シティローストはほろ苦さや滑らかな質感を感じつつも、浅煎りに通ずる華やかな香り、きれいな酸味も感じることができる焙煎度です。抽出も「濃すぎず、薄すぎず」バランスの良さを意識しましょう。

<ポイント>
注ぎ始めは少量の湯を静かに注いで粉にお湯を浸透させます。30秒前後でサーバーに抽出液がポタポタ落ち始め、注ぐ量を少しずつ増やして60秒前後で抽出液のポタポタが線状になるように。その後は表に記載の抽出時間くらいで目標の抽出量に達するよう注ぐペースを早くしていきます。ハイローストよりはじっくり、後述するフレンチローストよりはかろやかに、ちょうどいい塩梅に仕上げます。
【味わい解説】
一口目はシティロースト(中深煎り)ならではのおいしさを感じましょう。
ハイローストと比べると、口あたりの印象に厚みが増し、味や香りに“コーヒー感”が出てきます。その中にハイローストに通ずる華やかな香りや果実味もきちんと感じられます。苦味・酸味・コクが心地よいバランスで調和したおいしさです。
ハイローストとの違いを感じたら、おいしさを構成する要素をひとつひとつ丁寧に捉えていきます。
まず香りです。
フローラルは健在ですね。アタックからしっかりと香ります。そこにコーヒーらしい香りも加わってきます。
続いて酸味と苦味です。
心地よい程度の苦味が現れてきますが、酸味もまだしっかりと存在しています。ハイローストと比べる酸の量は少し穏やかになり、明るいトーンの中に柔らかさ・丸みも感じられます。
質感(テクスチャー)はどうでしょうか。舌の上で転がしてみましょう。ハイローストと比較して量感が増し、きめ細やかで滑らかな舌触りへと変化していることがわかります。
風味の要素一つ一つを丁寧に捉えたら、最後はリラックスして全体の風味を感じてみましょう。ブラックバーンらしいフローラルがアタックからしっかりと香り、柑橘は瑞々しい〜熟したような甘く華やかなニュアンスも帯びています。飲み心地のよいマイルドさの中に程よい濃縮感も感じられ、しっかりとブラックバーンならではのおいしさが反映されています。
フレンチロースト(深煎り)を味わう
【用意するコーヒー】
・タンザニア 「ブラックバーン農園」 フレンチロースト
【抽出のコツ】
フレンチローストはしっかりとした苦味のある深煎りコーヒーです。シティローストでも感じられたなめらかな質感は重量感を増し、苦味とともに甘みが現れます。のうこうな味わいを楽しむために、抽出は「じっくり」いれていきます。

<ポイント>
注ぎ始めは少量の湯を静かに注いで粉にお湯を浸透させます。40秒前後でサーバーに抽出液がポタポタ落ち始め、注ぐ量を少しずつ増やして70秒前後で抽出液のポタポタが線状になるように。前半はシティローストよりもやや「じっくり」を意識します。その後は表に記載の抽出時間くらいで目標の抽出量に達するよう注ぐペースを徐々に早くしていきます。3つの焙煎度の中で最も抽出量が少ない(=濃度が最も濃い)レシピですので、抽出後半もシティローストよりもゆっくり焦らずお湯を注ぎ、のうこうな液体に仕上げます。
【味わい解説】
最後はフレンチロースト(深煎り)です。
口あたりからしっかりとした厚み、濃厚な甘苦さが感じられます。この“深煎りらしさ”に続いて、フローラルや柑橘といった深煎りらしからぬ清涼感が現れますので余韻までじっくりとおいしさを感じましょう。
「なんか凄くおいしい深煎りかも…」と気がついたら、二口目以降はそのおいしさを構成する要素をひとつひとつ丁寧に捉えてみます。
まず香りです。深煎りらしい甘い香りから始まり、アフターにかけてフローラルが優勢になっていきます。
苦みや酸味はどうでしょう。
深煎りらしいしっかりとした苦味が感じられます。量は多くとも刺激的で焦げっぽい苦味ではなく、柔らかな質の心地よい苦味です。酸味はハイ、シティと比べると少なくなり、質も柔らかくなります。一口目の印象では、酸味よりも苦味や甘みを前面に感じるでしょう。しかし、酸に意識を向けて舌の上を転がしてみください。深煎りでもなお一定量の酸味が残っているのがわかります。
質感(テクスチャー)はクリーミーです。焙煎の深まりと共に液体の濃度・粘度は高まりますが、“しっかりとした”と表する程の力強さは呈さず、なめらかさの中にやわらかさも感じられる、しなやかなテクスチャーです。
最後にもう一度、全体の風味を感じてみましょう。
きめ細やかで繊細、かつ密度のある質感から始まり、深煎りらしい苦味と共に濃厚な甘みが広がります。まるで黒糖やカラメルのようです。口あたり、苦味、甘みの濃密さに“力強い”印象を感じつつも、余韻にかけては熟した柑橘のニュアンスや、フローラルがしっかりと香ることで、飲み下した後には不思議と清涼感が残ります。
力強さと繊細さ、濃縮感と軽やかさを兼ね備えたエレガントな深煎りです。
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焙煎度の知識を学ぼう
3つの焙煎度のテイスティング、いかがでしたでしょうか。
・バランスの良いマイルドさ
・オレンジ色の柑橘のニュアンス
・しっかり香るフローラル
・程よい力強さと繊細さ
これらブラックバーン農園の個性が、焙煎度の深まりと共に表情を変えながら、しっかりと感じられたと思います。
ここからは焙煎度についての知識や考え方もインプットしていきましょう。
焙煎度とは
生豆に鼻を近づけても私たちが想像するコーヒーの香りはしません。生豆を煮出してみてもコーヒーらしい風味は感じられません。私たちがコーヒーらしい風味を楽しむためには生豆に焙煎を施す必要があります。 これを担当するのが我々ロースターの役目で、「どこまで加熱するか」と「どのように加熱していくか」を素材ごとに適切に判断し、実行します。

“焙煎度”とは「どこまで加熱するか」を示すもので、コーヒー豆の見た目をアグトロン値やL値で数値化し示す場合と、浅煎り・中煎り・深煎りやミディアムロースト・シティロースト・フレンチローストのように単語で表記する場合があります。前者は生産管理に用いられることが多く、後者は主に消費シーン向けに用いられます。
また、後者は見た目だけでなく風味も含む総合評価として使われるのが一般的でしょう。

本章ではスペシャルティコーヒーを楽しむ場で一般的に使われている「ライト・シナモン・ミディアム・ハイ・シティ・フルシティ・フレンチ・イタリアン」の8段階の焙煎度表記を取り上げ、解説していきます。
8つを暗記する必要は必ずしもありません。概要だけでも把握しておくと、コーヒー専門店でコーヒー豆を選ぶ際の目安になりますし、店員さんとの会話がより楽しくなるはずです。
8つの焙煎度と風味傾向
8段階それぞれの焙煎度について“外観”と“風味”、2つの観点で解説していきます。ありそうなようで意外に示されていない内容なのでブックマークしておいても良いかもしれません。
【ライトロースト】
最も浅い焙煎度です。
<外観>
うっすらと色づく程度の茶色。豆のサイズは最も小ぶりで、表面にはしわが寄っています。
<風味>
抽出した液体にコーヒーらしい香りはなく、青っぽい穀物臭がはっきりと感じられます。酸の形成途上にある焙煎度であるため、酸味は未発達できつい渋みが伴います。飲用には適しません。
【シナモンロースト】
<外観>
シナモン色。表面にはまだしわが寄っています。
<風味>
酸味は感じられるものの単調で、依然として渋みが伴います。香りには穀物臭が残ります。まだ質感は感じられず、抽出した液体はさらっとしています。あまり飲用には適しません。
【ミディアムロースト】
<外観>
すこしずつ濃い茶色に近づいてきます。表面のしわも徐々に伸びてきます。
<風味>
穀物臭はやや残りますが、果実感のある酸味を楽しめるようになります。抽出した液体には質感が現れ始めるもののまだ弱く、舌触りはラフです。苦味はなく酸が際立つ焙煎度で、かろやかな味わいに仕上がります。
【ハイロースト】
<外観>
やや濃いめの茶色。表面のしわはだいぶ伸びてきますがまだ確認できます。
<風味>
質感に密度を感じられるようになってきます。穀物臭はほとんどなくなり、甘く華やかな香りが漂い始めます。ミディアムローストで感じられた果実感には複雑さが増し、きれいで豊かな酸味を楽しむことができる浅煎りコーヒーです。
ここまでが広義の「浅煎り」に該当する焙煎度です。一旦整理しましょう。
✔ ライトロースト・シナモンローストは穀物臭や渋みといったネガティブな要素が抜けきらずに残る
✔ ミディアムローストまで焙煎を進めると穀物臭や渋みは穏やかになり、心地よい酸味が感じられ、果実感が伴いはじめる
✔ ハイローストになると、質感や華やかな香りが立ち現れ、豊かな風味を楽しめるようになる
一口に「浅煎り」と言っても、どの程度まで焙煎を進行させたかによって風味は異なります。好みにもよりますが、コーヒーとしておいしく飲めるのは穀物臭が抑えられ、風味に果実感が伴うミディアムローストからでしょう。堀口珈琲がラインナップに揃えているのは、爽やかな果実感と共に密度ある質感や甘い香りも楽しめるようになるハイローストからです。
次に「深煎り」の領域に入っていきます。
【シティロースト】
「中深煎り」と表記される焙煎度で、“深煎りの入口”です。
<外観>
濃い目の茶色。表面のしわはほぼ伸びて、少しだけ光沢を帯び始めます。
<風味>
ローストの進行に伴ってほんのりとした苦味、甘みが現れてきます。これにより、果実味により複雑さが感じられるようになります。「果実感を楽しむなら浅煎り」というイメージがあるかもしれませんが、シティローストで初めて感じられる果実もあります。やわらかい口あたりに、酸味・甘み・苦味をバランス良く楽しめる焙煎度です。
【フルシティロースト】
深煎りの中心に向かう過程にある焙煎度です。
<外観>
こげ茶色。表面のしわは無くなり、表面にはほんのりと油が浮いてきます。
<風味>
酸味は多少穏やかになり、深煎りらしい質感と甘みがより強調されて感じられるようになります。きめ細やかな質感と豊かな甘みによって、果実感はより上品な印象へと変化していきます


【フレンチロースト】
深煎りのど真ん中です。
<外観>
深いこげ茶色。つるりとした表面には油が浮き、はっきりとした光沢が感じられます。
<風味>
口に含むと深煎りらしいしっかりとした苦味と甘みが感じられ、余韻には濃縮感のある果実味を感じとることができます。質感はより重量感を増し、滑らかな舌触りを楽しむことができます。


【イタリアンロースト】
極深煎りです。これ以上焙煎を進めると焦げが強く現れてしまうギリギリの焙煎度です。
<外観>
黒に近いこげ茶色。膨張して一粒のサイズは最も大きくなり、表面には油が浮いてテカテカとした光沢を帯びます。
<風味>
質感は粘性を帯び、力強い苦味と濃厚な甘みが感じられます。ベースとなる深煎りの風味に、焙煎由来の焦げた香りが加わることでスペシャルティコーヒーらしいイタリアンローストになります。
✔ シティローストからほんのりとした苦味が立ち現れ始める
✔ フルシティローストになると、酸味はやや穏やかになり、きめ細やかな質感と甘みが感じられるようになる
✔ フレンチローストでは深煎りらしい重量感のある質感に、しっかりとした苦味と甘みが感じられる
✔ イタリアンローストまで焙煎を進めると、焙煎由来のスモーキーな香りが加わる
焙煎度はどう決まる?
8つの焙煎度とその風味を順番に解説してきました。
ざっくりまとめておきましょう。
・浅い焙煎度では酸味を感じやすい
(極端に浅い焙煎度では穀物臭や渋みといったネガティブな要素が優勢になる)
・深煎りに向かうにつれ、苦味と甘みはしっかりと、酸味は穏やかに感じる
・より深煎りに進むほど、なめらかな質感や濃度・密度・粘度を感じやすくなる

過去にスペシャルティコーヒーの浅煎りを飲んで「酸味がきつくて苦手」と感じた方は、焙煎の過程に問題があったか、極端に浅い焙煎度(ライト〜シナモン)だったのでしょう。
高品質な素材であれば基本的にきつさはなく、爽やかな果実味や華やかな香りが感じられるはずです。きついとは無縁の「おいしい浅煎り」が楽しめます。
一方で適切に焙煎が施されていないと、強い渋みが表れてしまい、酸味と相まって「きつい」がもたらされてしまうのです。
フレンチローストまで焙煎を進めると酸味は穏やかになる一方で、スペシャルティコーヒーの“多様な”深煎りにおいては奥に隠れた酸味が重要な役割を果たします。もともと酸味の少ない素材を深煎りにすると、ただ苦いだけのコーヒーになります。
酸が豊かな素材だからこそ、深煎りでもそのコーヒーの個性を感じることができます。

ロースターは素材のテースティングを踏まえ、どの焙煎度でどういった特徴を中心に引き出すかを検討し、焙煎度を決定します。程よいコーヒー感の中に華やかさや果実感を表現する場合はシティローストに、しっかりした苦味や甘みと豊かな質感の中に特徴的な香りや酸味を示し複雑さを表現する場合はフレンチローストに、といった感じです。
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タンザニア「ブラックバーン農園」と焙煎度
今回の特集で飲み比べの題材に抜擢したタンザニア「ブラックバーン農園」はというと、堀口珈琲ではシティローストやフレンチロースト、さらにはイタリアンローストまで、その時々でさまざまな焙煎度に仕上げます。これほどまでに幅広い焙煎度に仕上げられる素材は結構限られます。
なぜでしょうか。
「どの焙煎度でもおいしいから」
その一言で済んでしまいそうですが、せっかくなので素材×焙煎度の観点から掘り下げてみます。
といっても、キーワードは2章のテイスティングの中で既に示されています。
“程よい”です。
東アフリカらしい力強さはあるものの、ケニアのような濃縮感!力強い!ではなく、“程よい”濃縮感で、中米のマイルドコーヒーをやや力強くしたバランス。果実のニュアンスもケニアやエチオピアのようにフルーティー!アロマティック!ではありませんが、オレンジ色の柑橘の程よい果実感を楽しめます。さらにはきめが細やかで繊細さも感じるテクスチャーや、しっかりとフローラルが香る華やかさをも兼ね備えています。
ブラックバーン農園の“程よさ”をもう少し具体的に表すと、「力強さと繊細さという相反する要素の調和」です。
一定以上の力強さがあって深い焙煎にも耐えられる。けれど程よい力強さだから、浅めの焙煎でもシャープになりすぎずバランス良い心地よさが保たれる。
繊細なテクスチャーや華やかな香りも兼ね備えているから、深い焙煎度では濃厚な味わいの中にエレガントさを纏い、浅めの焙煎度ではマイルドさの中に果実や花のニュアンスが心地よく備わる。
こうしたコーヒーはめったにありません。めったにないから、堀口珈琲の9つの定番ブレンドづくりに重宝します。
シティローストでは心地よいマイルドさを作り出す#3MILD&HARMONIOUSの素材として、もしくは華やかな香りを生かして#4AROMATIC&MELLOWの素材として。
フレンチローストではそのコクと甘さで#7BITTERSWEET&FULL-BODIEDを構成する素材として、もしくは繊細なテクスチャーとエレガントさを際立たせて#8PROFOUND&ELEGANTの素材として。イタリアンローストでは重厚感+華やかさで#9DENSE&TRANQUILの奥行きを生み出す素材として。
堀口珈琲においてブラックバーン農園が幅広い焙煎度で販売されてきたのはつまり、さまざまなブレンドの素材として活躍できる個性を備えた逸材だからです。

「コーヒー本来の個性を楽しめるのは浅煎り」とよく言われます。これが焙煎度について誤解を招きかねない表現であることはもうお分かりですよね。「ブラックバーン農園」のような優れた素材は、どの焙煎度でも個性を発揮するためです。
ブラックバーン農園のように浅煎りから深煎りまで対応できる素材があれば、
深煎りにしてしまうと苦いだけでフラットな風味になってしまう素材もあります。
浅煎りだと酸の量のコントロールが難しくロースターの技量が問われる素材もあります。
さまざまな素材に対し、ロースターはまず素材を把握し、そこからどのように個性を取り出していくかを検討します。知識と経験、味わいのイメージ、これらを総動員して焙煎度は選択されているのです。
【おまけコラム】
「ブルーマウンテン」「コナ」と焙煎度
コーヒーの名産地として有名なジャマイカの「ブルーマウンテン」やハワイの「コナ」はなぜいいコーヒーとして古くから愛好されてきたのでしょうか。「素材と焙煎度」の観点から考察してみましょう。
まず、それぞれの生産環境に目を向けてみると、いずれも標高がそれほど高くない産地です。高標高産地のコーヒーと比較すると、素材の傾向として酸の量が少なく、生豆の構造は柔らかくなります。そのため、深煎りにすると焦げやすく風味も弱いため、浅い焙煎度で楽しまれてきました。
そもそもの酸の量が少ないので、浅煎りでも酸味はきつくならず、さっぱりして飲みやすい風味に仕上がります。加えて、いずれも伝統品種である「ティピカ品種」の産地ですので、品種由来の優しい口あたりが感じられます。
つまり、酸が穏やかで上品な口当たりという「素材」の傾向と、浅煎りという「焙煎度」の組み合わせが、万人に評価されてきた理由なのだと思います。
気候変動の影響でジャマイカやハワイにおいてかつてのような高品質コーヒーの栽培は難しくなりつつあります。病害の影響で、伝統品種も失われつつあります。かつてのような素晴らしい風味のブルーマウンテンやハワイ・コナが発見されれば当店でもぜひ扱いたいですし、他の産地でもそれに見合う品質のコーヒーを常に探しています。
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おわりに
今回の特集記事を読み、飲み比べセットで3つの焙煎度を体験していただいた上で、
もう一度質問です。
どの焙煎度が好きですか?
「やっぱり深煎りが好きだった」という方もいれば、「意外と浅煎りが好きかもしれない」と答えが変わった方もいらっしゃるでしょう。
焙煎度ごとの風味を理解することで、自分の好みや気分にあったコーヒーを遠回りせずに選ぶことができるようになります。
焙煎度ごとに求める風味は異なるので、いれ方も変わってきます。
本特集に記載のレシピを参考に、それぞれの焙煎度ならではの個性を引き出す抽出を意識すれば、抽出による風味の違いにまで踏み込んでコーヒーを楽しむことができます。
シリーズ企画「飲んで学べるスペシャルティコーヒー」の焙煎度編、長文にお付き合いくださりありがとうございました。
