2-1 そもそもコーヒーの“精製”とは？

ナチュラルというと「自然に優しい」「有機栽培」「人工物を使わずに作った」といったイメージがあるかと思いますが、コーヒーにおけるナチュラルとはあくまでも「ナチュラル精製で得られた」という意味しかもちません。では、そのナチュラル精製とは何なのか。詳しく見ていきましょう。

上の写真は収穫したばかりのコーヒーの果実です。サクランボのような見た目からコーヒーチェリーとも呼ばれています。このコーヒーチェリーから種子を取り出して生豆を得るためには、果皮や果肉などの被覆物を除去し、水分を除去する（＝乾燥させる）工程が必要となります。この工程がコーヒーの「精製」です。

2-2　「ウォッシュト」と「ナチュラル」

コーヒーの精製は、細かく分ければ様々な方法がありますが、大別すると「ウォッシュト（湿式）」と「ナチュラル（乾式）」の２つに分けられます。主な違いは“乾燥させる時の状態”です。

【ウォッシュト（湿式）精製】

パーチメントコーヒーの状態で乾燥させる方法をウォッシュトといいます。
パーチメントコーヒーとは、コーヒーチェリーの果皮や果肉を除去し、その後水を使って粘質物を洗い流した状態のものを言います。

【ナチュラル（乾式）精製】

コーヒーチェリーを果実のまま乾燥させる方法をナチュラルといいます。
上の写真の様に天日による乾燥が多用されますが、機械による乾燥も行われます。天日乾燥のあとに機械乾燥を行う形で両方を組み合わせた乾燥も行われます。 乾燥された果実の被覆物を除去して、コーヒー生豆を取り出します。

2-3　ナチュラルってどんな味？

ナチュラルは 、ウォッシュトよりも生豆の被覆物が果肉に接した状態が長く続くことが影響して、独特の風味に仕上がると言われています。その風味の表現は、ベリー系果実の熟したニュアンスや、スパイス感、時にはワインやウイスキーを思わせる芳醇さなど様々です。

3-1 イエメン‐ナチュラルの伝統産地‐

伝統的には、生産国がおかれる「環境要因」によって精製方法が選択されてきた背景があります。

コーヒー飲用発祥の地「イエメン」。数百年以上にも及ぶコーヒー栽培の歴史を有するイエメンにおいて採用されている精製方法はナチュラルです。
“イエメン産のウォッシュト”はほぼ存在しません。 なぜなら、極端に降水量が少ないイエメンにおいては大量の水を必要とするウォッシュトはつくれず、また乾燥した気候はナチュラル精製に適しているからです。

3-2　エチオピア‐ウォッシュトとナチュラルの二刀流で進化する産地‐

アラビカ種発祥の地であるエチオピアもまた長いコーヒー栽培の歴史があり、イエメンと同じく伝統的にナチュラルが採用されてきた産地です。
イエメンほど極端に雨が少ない訳ではありませんが、雨季と乾季がはっきりと分かれているため、ナチュラル精製に適しています。
一方で、近年ではウォッシュト精製も盛んに行われています。その理由の一つは「品質向上のため」です。

ナチュラルは果実のまま乾燥させることによって独特な風味を得やすい一方で、シンプルな工程故に熟度を揃えるための選別が難しく、風味に悪影響を及ぼす未熟豆が混入しやすいというデメリットがあります。
一方、ウォッシュトの場合は、収穫したコーヒーを乾燥させるまでの工程で機械や浮力を用いた選別が可能なため、品質が均一化された質の高いコーヒー生豆を得やすくなります。

高品質なエチオピア産ウォッシュトが登場することで、高品質なナチュラルへのニーズも高まります。
今ではウォッシュト、ナチュラルともに高品質なエチオピアを楽しめるのはコーヒー生産の「伝統」を背景に、スペシャルティコーヒー産地としての「進化」があります。

3-3　コスタリカ ‐挑戦する生産者たち‐

イエメンのように極端に降雨量が少ない訳でもなく、エチオピアのように雨季と乾季が明確に分かれている訳でもないコスタリカは、伝統的にウォッシュトの産地です。
それはつまり、水源が豊富（＝雨が豊富）ということであり、そういった環境において果実のまま乾燥させるナチュラル精製を施すにはリスクが伴うということでもあります。その帰結として、品質の良いナチュラルを作る生産者は限られてきます。

それでもコスタリカの生産者がナチュラル精製を選択するのは、香味の多様さを追求し、自らのコーヒーに付加価値をつけるための「挑戦」です。高標高の厳しい環境が育んだ高い熟度ときめ細やかな乾燥管理によって仕上げられたナチュラルは、クリーンかつ複雑な風味を兼ね備えたコーヒーに仕上がります。

3-4　3ヶ国の高品質なナチュラルに共通すること

3ヶ国のナチュラルはそれぞれ異なる背景がありますが、今回ご紹介する商品に共通しているのは「品質向上」のための取り組みです。

前述の通り、ナチュラルは収穫したチェリーをそのまま乾燥させるシンプルな精製方法ですが、熟度を揃えるための選別が難しく、未熟豆が混入しやすいというデメリットがあります。
収穫における熟度が不揃いだと乾燥が均一に進まないため、品質に悪影響を及ぼす乾燥不良や過剰乾燥のリスクが伴います。未熟豆の混入も風味に悪影響を及ぼします。

ウォッシュトとナチュラル、いずれの精製方法においても収穫の時点における熟度の均一性が重要ですが、精製工程における選別が難しいナチュラルにおいては熟度管理がより厳密に求められます。定期的な撹拌などの乾燥管理も欠かせません。

それは環境の異なるイエメン、エチオピア、コスタリカにおいても共通しています。 熟度が均一に揃えられた完熟した果実だけを収穫し、乾燥ムラが起きないようきめ細やかなケアをする。各生産国において丁寧な精製を施されることで、 それぞれの産地の個性や品種の特性を兼ね備えた「多彩なナチュラルの香味」を味わうことができるのです。

質問その1

次の質問にそれぞれお答えください。(ボタンを押すと次の設問に進みます。)

Q1.ナチュラルのコーヒーを飲んだことがありますか？

Q2.ナチュラルのコーヒーを普段から積極的に飲みますか？

Q2.普段コーヒーを飲むときは